97回を数える選抜高校野球大会が3月18日に甲子園球場で開幕する。全国から選ばれた32校が13日間にわたって熱戦を繰り広げる。今年もどんな名勝負が生まれるか楽しみだ。

 兵庫からは、東洋大姫路が3年ぶり9度目の出場を果たす。昨秋の県大会と近畿大会をいずれも17年ぶりに制し、明治神宮大会では初めてベスト4に進出した。エースの阪下漣投手を中心とする安定感を誇る守備力に加え、打線も近畿大会4試合で29得点と力強い。全国の強豪校と戦うのに遜色はない。

 東洋大姫路は1977年夏に全国制覇を果たしているが、選抜大会はベスト4が最高だ。この春はそれを超える躍進を期待したい。同校OBで履正社(大阪)の監督時代に夏1度の優勝、春2度の準優勝を飾った岡田龍生監督の采配も注目される。

 今年のセンバツは、都道府県別で春夏とも甲子園大会最多の優勝回数を誇る大阪勢が98年ぶりに出場を逃した。戦力以外の要素も加味する21世紀枠では、壱岐(長崎)と横浜清陵(神奈川)が選ばれた。

 壱岐は九州北西の玄界灘に浮かぶ壱岐島にあり、全部員21人が地元出身だ。島外での試合に遠征費用がかかるなど困難な環境を克服しての初出場は、各地の離島で鍛錬する球児たちに勇気と希望を与えるだろう。

 一方、日本高野連は理事会を開き、投手の障害予防を目的とした「1人の1週間の総投球数を500球以内」とする制限を今春から正式に導入することを決めた。2020年からの試行を終え、整形外科医らによる「検証ワーキンググループ」の報告を受けて判断した。

 選手の将来を重視する流れが強まる背景には、低年齢層での肩や肘のけがのまん延と、野球離れがある。投手の負担軽減の一歩として評価できる。

 大会運営もさらなる工夫が求められている。酷暑対策の一環で、今夏の全国選手権大会では開会式を午後4時から実施するほか、試合を午前中と夕方に分ける「2部制」を昨年の3日間から6日間に拡大する。

 日本高野連などは新たなルールの課題などを丁寧に検証し、選手の安全を最優先とする改革を続けてもらいたい。