神戸市が発表した2025年度当初予算案は、神戸空港国際化や都心・三宮の再整備など大型事業を継続しつつ子育て支援や次世代への投資に力を入れる内容となった。総額2兆331億円のうち、主要施策を賄う一般会計は1兆59億円で前年度比11・1%増の積極姿勢が目を引く。

 11月に3期目の任期満了を迎える久元喜造市長は会見で「新しい国際都市にふさわしい、未来を見据えたまちづくりを意識した攻めの予算だ」と強調した。

 人口流出を抑え、都市の活力低下をどう防ぐかは切実な課題だ。予算案では若年層や子育て世帯に目配りしたメニューが並ぶが、他の自治体も同様の施策を進める中、成果を短期間で手にするのは容易ではない。

 海と山に恵まれた自然環境と、多くの国・地域の人が共生する多様性が神戸の魅力だ。予算案では、企業や住民など多様な主体との協働による森林・里山の再生やまちの緑化を重点項目に掲げた。地味だが息長く取り組んで、都市のブランド力の向上につなげる必要がある。

 子育て関連では教育費負担を減らすため、市内の高校などに通う生徒の通学定期券全額補助を通年で実施するほか、市外高校への通学定期代の補助率も大幅に拡充する。総額で約23億円を投じる。

 保育料の負担軽減も盛り込んだ。共働き世帯が多い層(年収930万~1130万円)の第1子保育料を明石市など周辺市町より安い水準に引き下げるほか、多子世帯の減免も続ける。夏休みの学童保育受け入れ施設の倍増など働く子育て世代への支援に手厚く予算を配分した。

 一方、都市基盤づくりも本格化している。4月に国際チャーター便が解禁される神戸空港は第2ターミナルが完成し、韓国、中国、台湾との間に週計40往復が就航する。国内線の発着枠も1日60往復に拡大する。

 玄関口となる三宮の再整備では、バスターミナルが入る高層ツインタワー(1期)やJR新駅ビルなどの建設工事を着実に進める。訪日客を含む交流人口の拡大が地域経済や財政にもたらす効果を注視したい。

 多くの市民が暮らす周辺部への目配りも重要だ。ニュータウンでは住民の高齢化と建物の劣化が同時並行で進む。西神中央や名谷など拠点駅周辺の再整備を加速させる一方、交通空白地域の解消へコミュニティーバスなどの導入促進も検討する。

 市長が掲げる「持続可能な大都市」を実現するには、地域課題を掘り起こし、主体的に行動できるNPOなどとの協働が欠かせない。阪神・淡路大震災の経験が育んだ市民参画の仕組みを深化させ、新たな神戸の姿をともに描いてもらいたい。