国民スポーツ大会(国スポ)の改革を巡り、日本スポーツ協会の有識者会議が提言案をまとめた。多くの競技を秋に集中開催する方式を改め、一流選手が参加しやすい時期に競技を分散させる「通年開催化」が柱だ。
国スポは戦後間もない1946年から国民体育大会(国体)として始まった。日本スポーツ協会と文部科学省、開催地の共催で行われてきた。
提言案では会期分散により大会の魅力や経済効果を高め、開催地の運営面の負担軽減を図るとする。一方、全国知事会が求める財政負担軽減策については明確な結論を示さなかった。
気になるのが、「毎年開催」「都道府県対抗形式」「全国持ち回り開催」といった大会の骨格となる部分はおおむね現状を維持する点だ。これでは抜本改革には程遠く、大会の簡素化が進むのかも疑問が残る。
昨年、重い費用負担などに悩む自治体の首長から廃止を含む見直しを求める声が相次いだのも、国スポの在り方を根本から議論するべきだとの問題意識があったからだろう。
毎年9~10月に開かれる大会は約10日間の会期中、30以上の競技を実施し、都道府県対抗で総合優勝を競う。競技が一定期間に集中する方式が足かせとなり、日程調整が難しい一流選手の参加が少なくなっていた。
集中開催方式から脱却することで有力選手の出場を促し、開催地にとって課題となっている輸送、宿泊の分散につなげるなどの効果が期待される。
ただ、実際に参加を促進できるかは疑問だ。近年、各競技で五輪での活躍が目覚ましく、代表クラスの多くは世界選手権や国際大会に照準を定める。国スポを「国内最大・最高の大会」と位置付けるには無理があり、選手や競技団体が参加の利点を感じられる方策が不可欠だ。
全国知事会が最大の論点とした国と協会による追加拠出は継続協議となった。増収策も入場料徴収の拡大や協賛金制度の見直しなど十分とは言い難い。
国スポは競技普及や地域振興に一定の役割を果たしてきた。取り巻く環境の変化を見据えて意義を問い直し、きちんと将来像を描く。持続可能な大会へさらに議論を深めてもらいたい。