兵庫県の斎藤元彦知事らがパワハラなどの疑惑を文書で告発された問題を巡り、知事が自ら設置を決めた第三者委員会がきのう、調査報告書を公表した。
文書を公益通報と扱わずに告発した元西播磨県民局長を懲戒処分とした県の対応は、違法で処分は無効とした。文書が指摘した職員への叱責(しっせき)など大半をパワハラと認定した。
先に公表された県議会調査特別委員会(百条委員会)の調査報告書よりも厳しい判断である。知事は自らの非を認めて反省し、責任の取り方を行動で示すべきだ。
第三者委は昨年9月から、県弁護士会から推薦を受けた弁護士6人が委員や調査員を務め、文書に記載された7項目の疑惑について関係者らの面談などを重ねてきた。
報告書は、文書を公益通報者保護法における外部通報に該当すると認定した。知事らは当事者であるにもかかわらず通報者を調査・特定し、内部調査だけで懲戒処分した。一連の過程は、違法性が「看過できないほど大きい」と指弾した。法の趣旨を理解せず、自身への告発を封じようとしたことは許されない。
報告書は告発文書の作成・配布を理由とする懲戒処分は「効力を有しない」とした。県当局には元局長の処分の再検証を求める。
パワハラ行為について、第三者委は16件を調査し、職員を強く叱ったり夜間や休日にチャットを送りつけたりするなどの10件を認定した。知事が会見で元局長を「公務員失格」「うそ八百」と非難した発言もパワハラに該当するとした。文書の信頼性をおとしめるような言動に厳しい判断を下したと言える。
パワハラなどを生んだ背景や原因にも踏み込んだ。「感情が制御できない」など知事の資質を挙げる一方、県庁組織に「コミュニケーションの不足とギャップ」などの問題があると言及した。未然に防ぐ制度や仕組みがあっても体制の不備や意識の欠如で機能せず、「組織的な安全装置が働かない状態にあった」とも指摘した。知事は行動を省み、改善の先頭に立つ必要がある。
第三者委は、知事が百条委の報告書を受け入れる姿勢を示さないことにも苦言を呈した。組織のトップとして「自分とは違う見方もありうると複眼的な思考を持ち、人を傷つける発言は慎むべきだ」と総括した。
報告書を受け、知事は「重く受け止めている」としつつ、「告発文書は誹謗(ひぼう)中傷性が高い」と従来の主張を繰り返した。文書問題に端を発した混乱は1年に及ぶ。県政の停滞で影響を受けるのは県民だ。第三者委の結論に、知事として真摯(しんし)に向き合わねばならない。