世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する文部科学省の解散命令請求で、東京地裁は高額献金や霊感商法の被害が「類例がなく膨大」として宗教法人法に基づき解散を命じた。これまで幹部の刑事責任を問われた2法人が解散を命じられたが、民事上の不法行為による解散命令は初めてとなった。
解散請求を巡っては、献金などの勧誘が法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められるかどうかが争点となった。地裁は民事訴訟で賠償が認められた32件に加え、和解や示談となった事例も含め約1560人、合計約204億4800万円の被害を把握、解散命令の要件を満たすと判断した。
数々の司法判断が示され、2009年には「コンプライアンス宣言」を公表したにもかかわらず、十分な対策を取らなかった教団の体質は悪質と言わざるをえない。憲法が保障する「信教の自由」を考慮しても、教団に事態の改善は期待できず、解散命令はやむを得ないとした地裁の判断は説得力がある。
高額献金を巡っては、貧困や家庭崩壊、信者の子「宗教2世」への虐待など深刻な被害が現在も続くが、解散命令によって問題が直ちに解決するわけではない。国は被害回復に向けた支援を急がねばならない。
解散命令に対し、教団は「不当な宗教弾圧だ」として東京高裁に即時抗告する方針で、決着まで長期間を要する可能性が否めない。その間、被害弁済に充てるべき教団資産が流失する恐れもある。財産監視の法整備は十分ではなく、さらに保全に向けた対策を強化すべきだ。
解散命令が確定すれば教団は税制の優遇措置を受けられなくなるが、任意団体として活動は継続できる。監督官庁の監視が弱まる側面もあり、継続的に被害防止を図る仕組みを検討する必要がある。
旧統一教会への解散命令は、22年の安倍晋三元首相襲撃事件をきっかけに要請が強まった。一方、被害は1980年代に確認され、コンプライアンス宣言のころは深刻化していた。なぜ被害を長年放置してきたのか、政治の責任が問われる。
旧統一教会に詳しい宗教学者、島田裕巳さんは「冷戦が続く中、自民党の保守派は旧統一教会と『反共』で協力し合い、高額献金などの被害を容認してきた。責任を教団に負わせるだけでなく、自らも明らかにするべきだ」と指摘する。
自民党は所属議員と教団の関係を調査し、約180人に接点があったと公表したが、それだけでは不十分だ。石破茂首相はリーダーシップを発揮し、癒着の経緯を解明して病根を断ってもらいたい。