兵庫県の告発文書問題を巡り、県の第三者調査委員会が示した報告書に対し、斎藤元彦知事が会見して見解を公表した。
机をたたいての叱責(しっせき)など認定された10件のパワハラ行為について、知事は「真摯(しんし)に受け止める」と初めて認め、職員に謝罪した。一方で、第三者委が違法性を認定した告発者に対する県の一連の対応については「誹謗(ひぼう)中傷性の高い文書だとの認識は変わらない。対応は適切だった」と従来の主張を繰り返した。
告発文書を公益通報と取り扱わず、告発者を特定して懲戒処分を科した知事らの対応について、第三者委の報告書は公益通報者保護法に違反すると認定した。告発文書の作成と配布を理由の一つとする処分は「裁量権の乱用で無効だ」と断じた。
これに対し、知事は「指摘は重く受け止めるが、司法の専門家でもさまざまな意見がある」と反論した。関係者によると、県幹部が処分の撤回を進言したが受け入れなかったという。自身の責任については「反省すべきは反省する。襟を正して仕事を進める」と述べるにとどめた。
文書問題の表面化から1年がたった。第三者委は中立性を重視した調査を求めて知事が自ら設置したものであり、その結論を受け入れなければ違法状態が続くことになる。法令を順守し、独善的な姿勢を改めない限り、県政の混乱は収束できない。
違法の可能性は県議会調査特別委員会(百条委員会)の報告書も指摘し、知事は「適法の可能性もある」などと反論した。第三者委はこれを「正面から受け止める姿勢を示していない」と批判したが、知事はこれも「一つの意見」とかわした。
元裁判官ら6人の弁護士で構成し独立性の高い第三者委が出した結論は極めて重い。自身に不都合な結果だからといって認めなければ、第三者委は意味をなさない。知事は責任を回避せず、告発した元西播磨県民局長の懲戒処分を見直すべきだ。
パワハラについて、これまで知事は「業務上必要な指導」としていたが、会見では「不快、負担に感じた職員に改めて謝罪したい」と述べた。知事が昨年3月の会見で、元県民局長について「公務員失格」「うそ八百」と発言したことも第三者委はパワハラに当たると指摘した。知事はこれを受け入れ、元県民局長に対し「大変申し訳ない」と初めて謝罪したが、発言は撤回しなかった。責任の取り方については「ハラスメント研修を受けながら県政を前に進めていく」と繰り返した。
パワハラを認めた以上は自らへの処分でけじめをつけなければ、信頼回復は望めない。知事が真摯に向き合うべきはその点に尽きる。