新型コロナウイルス禍で鈍化していた「東京一極集中」の流れが、再び加速している。

 総務省の2024年人口移動報告で、東京都は転入者数が転出者数を上回る「転入超過」が7万9285人となり、47都道府県で最も多くなった。東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)の4都県は全て転入超過となっている。

 石破茂首相は初代の地方創生担当相を務め「地方創生2・0」を内閣の看板に掲げている。長年の課題を解消するため政策を練り直す必要がある。

 東京都の転入超過は19年に8万2982人を数えたが、コロナ禍の行動制限などで21年には5433人と大幅に減った。だが22年に増加に転じ、今回はほぼコロナ禍前に戻った。

 留意すべきは、東京一極集中が地方の衰退だけでなく、過剰な通勤ラッシュや住宅難、災害リスクの上昇など東京の住民にも負の影響をもたらす点だ。

 半世紀前には田中角栄元首相が、高速交通網整備と産業分散を目指す「日本列島改造論」を掲げ、14年には安倍晋三政権が地方創生を打ち出したが、目立った成果は出ていない。2年前に文化庁が京都に移転して以来、省庁移転の動きもぱったり途絶えたままだ。

 内閣府によると、総人口のうち東京圏で暮らす割合は1950年の15・5%から90年に25%を超え、2019年には29・1%まで増えた。一極集中に歯止めがかかりそうにない。

 内閣府の調査では、東京圏の転入超過は就職や進学世代の若者が中心で、「能力や関心に合う学校や仕事が地元にない」、女性では「地元を離れたい」などの理由が目立つ。近年は男性より女性が多い。

 女性を含む若者が残り、都市部に出ても戻ってくる地域にするには、学びや仕事の場を増やすとともに、ジェンダー・ギャップ(男女格差)や無意識の偏見を解消することが重要だ。豊岡市のように、行政が積極的に取り組んでいる例もある。

 多様な立場の人が住みやすいまちをつくる視点は、一極集中の流れに歯止めをかけるために欠かせない。地域の実情に応じた施策をまず自治体や住民が描いた上で国が支援するべきだ。