日中韓の外相が東京都内で会談し、「未来志向」で協力することを確認し合った。首脳会談の早期開催に向け、調整を加速させる。
法の支配に基づく国際秩序が大きく揺らぐ中、アジアの主要国である3カ国が対話を継続し、地域の安定を図るために交流と協力を推進することは極めて重要だ。関係改善の機運を、懸案事項の解決につなげる必要がある。
岩屋毅外相は日中韓の首脳会談について「年内にはやらなければいけない」と述べた。具体的な成果を得られるよう、相互理解の促進、暮らしを守るための協力、少子高齢化など全世代共通の課題解決-の三つを柱に調整するという。
3カ国を「接近」させている大きな要因は、自国第一主義を主張し、高関税を繰り出すトランプ米政権に対する警戒感である。
不動産不況が続く中国は、米国との貿易戦争激化による経済への打撃に危機感を募らせる。日韓は関税に加え、同盟国との安全保障体制をコストとみなすトランプ氏の言動に不安を抱く。経済的な結びつきの強い日中韓が、自由貿易を堅持する立場で協調路線を採ろうとするのは現実的と言える。
一方、中国には日米と米韓の関係にくさびを打つ思惑も見え隠れする。ウクライナ戦争を巡り、米国とロシアが接近している状況への焦りもあるだろう。
日中の2国間では、閣僚級の「ハイレベル経済対話」が約6年ぶりに開かれた。両国外相は戦略的互恵関係を深めることで一致したが、具体的な成果に乏しかった。
東京電力福島第1原発の処理水海洋放出に伴う中国による日本産水産物の全面禁輸措置については、昨年9月に段階的に緩和することで両国が合意した。しかし、半年が経過しながら、輸入再開時期はいまだ見通せない。中国は一刻も早く合意を行動に移すべきだ。
日本側は中国にスパイ容疑などで拘束された邦人の早期解放を求めたが、こちらも進展はなかった。すでに起訴された邦人の初公判が非公開で行われるなど司法プロセスは透明性に欠ける。日本企業が安心して事業を展開できる環境と言いがたい。
日中韓の外相は、核・ミサイル開発を進める北朝鮮問題も協議した。温度差はあるものの、非核化を求める点では一致する。中国が北朝鮮への影響力を発揮するよう、日韓は働きかけを強めたい。
分断が進む国際社会で多国間連携の重要性は一層増している。日中韓は粘り強く対話を重ね、協調を軸とする外交への転換をけん引することが求められる。