中谷元・防衛相とヘグセス米国防長官が初会談し、日米同盟を強化することで一致した。米国からは、日本の防衛費増額への期待感が示された。

 第2次トランプ政権は、安全保障体制や関税を材料に同盟国にも揺さぶりをかける。米国の出方が注目される中、ヘグセス氏は「中国による武力行使を抑止する上で日本は不可欠のパートナーだ」と強調した。

 防衛省内では「防衛費増に関して直接の要求はなかった」と安堵(あんど)する声があるという。しかし、楽観的に過ぎるだろう。

 トランプ大統領は「日本にはわれわれを守る義務がない」と日米安全保障条約に不満を持つ。米政権幹部からは、日本の防衛費や在日米軍駐留経費の日本側負担の増額を求める意見が相次ぐ。今後、米国による防衛費の負担増要求は日本にとって最大の懸案となりそうだ。

 米側は在日米軍司令部について、作戦指揮権を持つ「統合軍司令部」への再編成を始めたと表明した。日本が3月に発足させた陸海空3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」のカウンターパートとなる。トランプ政権のアジア政策には不確実性もあるが、日米の軍事一体化はさらに進むとみられる。

 会談で改めて鮮明になったのは、対中強硬路線を取る米国が「力による平和」を推し進めようとしていることだ。

 ヘグセス氏は会談後の会見で、台湾海峡や南シナ海などでの有事を念頭に「西太平洋のあらゆる不測事態で日本は最前線になる」と踏み込んだ。「平和を切望する者は戦争に備えなければならない」とも述べた。安保関連法が想定する日本の役割を超える「貢献」を求めてこないか、懸念を抱かざるを得ない。

 一方、中谷防衛相は台湾有事が起きた場合の対応を報道陣に問われ、「日本の憲法、国際法、国内法に基づき具体的に検討する」と答えるにとどめた。

 米国は中国を打ち負かすべき最大の脅威と位置付ける。力一辺倒の米国に従うばかりでは、アジアの安定と平和は遠のきかねない。日本は対話を通して隣国である中国との緊張緩和に努めねばならない。韓国やオーストラリアなど普遍的価値を共有する国との連携が不可欠だ。