2025年度予算が成立し、国会は後半戦に入った。与野党で主張が大きく異なる企業・団体献金の在り方や選択的夫婦別姓制度、年金制度改革法案の扱いなど課題は山積している。夏の参院選を前に、与野党は有権者に選択肢を示す建設的な論戦を心がけなければならない。

 少数与党の石破茂政権は、野党の要求をのみ、衆院に続き参院でも予算案を修正した。衆院に差し戻した上での成立は現行憲法下では初となる。一般会計の総額は約115兆円と修正前から大きく変わらず、過去最大を更新した。財源の不足分は過大に積んだ予備費で穴埋めするなど、場当たり的な対応が目につく。

 政権発足から半年を迎えた石破首相は会見で「党派を超えた協議の成果を取り入れ、成案が得られた。熟議の国会の成果だ」と強調した。野党の提案で「省庁別審査」が初めて開催され、予算を洗い出し財源確保や修正要求項目の絞り込み作業を可視化したのは一歩前進といえるが、実態は「熟議」とは程遠い。

 政権の迷走ぶりを強く印象付けたのが、医療費の患者負担に月ごとの上限を設ける高額療養費制度の取り扱いだった。今夏から自己負担額の上限を引き上げる政府方針に、与野党や患者団体から批判が噴出した。予算案提出後も方針は二転三転し、首相が全面凍結を表明したのは予算案が参院に送付されてからだ。そもそも拙速のそしりは免れない。

 高校授業料無償化や、所得税が生じる「年収103万円の壁」見直しを巡っても、与野党協議が水面下で進み、政策決定過程の不透明さが際立った。予算への賛成を取り付けるために野党の要求を無定見に受け入れ、実質的な政策論議が不十分だった感は否めない。公約とした政策の実現を優先させ、財源論を後回しにする野党の姿勢にも疑問が残る。

 首相自身も火種をつくった。自民党所属の衆院1期生に1人10万円分の商品券を配った事実が判明し、野党から追及を受けた。首相は陳謝を重ねたものの、内閣支持率は20%台に急落した。同様の配布は安倍、岸田両政権でも行われていたことも分かった。「政治とカネ」の問題が国会で議論されているさなかである。「政治目的ではない」と強弁する首相の認識を疑わざるを得ない。

 企業・団体献金の扱いについて、3月末までに結論を得るとした与野党の合意は、各党の意見集約ができず先送りされた。首相が決着へ指導力を発揮した形跡はうかがえない。

 政治家と企業が癒着し、政策をゆがめる恐れがある企業・団体献金の禁止は30年来の懸案だ。今こそ熟議を深め、国民の納得を得られる結論を出すのが国会の責務である。