地価の上昇傾向が全国に広がっている。
国土交通省が公表した1月1日時点の公示地価は、全国平均が前年比2・7%上昇した。4年連続のプラスで、伸び率はバブル経済崩壊後の1992年以降で最大となった。東京、大阪、名古屋の三大都市圏を除く地方圏にも不動産需要の高まりが波及し、前年からの継続調査地点の半数で価格が上がった。
兵庫県は3年連続のプラスとなった。用途別では住宅地が1・9%増、商業地は3・5%増といずれも前年の伸びを上回った。
地域別にみると、住宅地では淡路がマイナスからプラスに転じた。北播磨、西播磨、但馬、丹波の4地域は依然マイナスだが、下げ幅が縮小した。商業地では神戸と阪神南が5%超伸びた。訪日客の増加や再開発への期待が、市況を活気づかせているようだ。
地価上昇をけん引するのは、海外からの投資マネーである。円安や欧米と比べて低い金利で資金調達がしやすい点も、日本への投資を後押ししている。こうした傾向は今後も続くとみられる。
値上がりによる経済活動の活発化で新たな需要を創出し着実な賃金アップを実現させるなど、持続可能な成長につなげる必要がある。同時に、地価上昇が暮らしにもたらす弊害にも目を向けねばならない。
民間調査機関によると、2024年の新築マンションの平均価格は近畿で約15%増の5357万円、東京23区は2年連続で1億円を超えた。中古物件の価格や賃貸の家賃も上昇し、都市部を中心に一般市民が住まいを確保することが難しくなっている。自治体は、空き家の活用などで若者や子育て世帯への住宅支援策を充実してほしい。
地域活力を維持する観点から、投資目的で不動産を所有するが実際には住まない「非居住者」の増加を問題視する声も出てきた。都心部でタワーマンションの建設を規制する神戸市では、市の有識者会議がタワマンの非居住者に「空室税」を導入することを提言した。市の対応が注目される。
高知市や秋田市では津波などによる浸水の危険性がありながら、駅に近いといった利便性の高さから地価が上がった住宅地がある。不動産業者には、契約前に水害リスクを購入・入居希望者に説明するよう義務づけられた。自然災害は多発している。顧客側もハザードマップの確認などで備えたい。
建築費の高騰や金利上昇、トランプ米政権の高関税など懸念材料は多く、先行き不透明感は増している。地価の動向に一層の注意が必要だ。