学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書を財務省が改ざんした問題で、改ざんを強制されたのを苦に自殺した元近畿財務局職員赤木俊夫さんの妻雅子さんに関連文書の一部がようやく開示された。

 雅子さんが夫の死の真相を知りたいと、検察庁に任意提出された文書を対象に情報公開請求していた。今後1年以内に全17万ページ超の文書と電子データを段階的に開示する。

 第1弾では2013~16年の森友側との交渉記録など2千ページ超が開示された。ただ大半は18年に国会に提出した文書と同じ内容で、新たな事実は含まれていない。既に公開されている内容にもかかわらず、これまで開示請求に応じず、いたずらに問題を長引かせてきた財務省の態度は理解に苦しむ。

 国有地が破格の値引きで売却された過程に安倍晋三元首相夫妻や政治家の関与はあったのか。政権への官僚の忖度(そんたく)が政策判断をゆがめたのではないか-。疑惑は残ったままだ。財務省は残る文書も速やかに開示し、全容の解明に努めるべきだ。

 まだ隠された文書があるのではと疑われかねない要素もある。国会に提出済みの報告書などでは、14年4月に当時の学園理事長が財務局職員に昭恵氏と並ぶ写真を示し、親密さを強調するやりとりが明らかになっている。だがこの面会記録は今回の開示資料には含まれていなかった。

 その後、国有地売却に消極的だった財務局が一転、15年5月に森友側と定期借地契約を結ぶ。16年3月に地中からごみが見つかると撤去費として評価額から8億円余りを差し引いた1億3400万円で売却し、分割払いも認めた。値引きの算定根拠を示す記録は見当たらない。

 17年2月に問題が発覚し、国会で追及された安倍氏は「私や妻が関係していたなら首相も国会議員も辞める」と明言した。財務省が文書改ざんを始めたのはその直後で、14件で昭恵氏の名前や発言などを削除していた。だが、誰がどのように改ざんを指示したのかははっきりしない。

 赤木さんが命を絶って7年。改ざんを主導したとされる当時理財局長らは告発されたが不起訴となった。財務省は雅子さんの開示請求に対して文書の存否すら明らかにせず、今年1月、大阪高裁の不開示取り消しの決定が出るまで開示を拒み続けた。財務省に求められるのは、開示記録を踏まえた説明責任である。

 6月には赤木さんが取りまとめたとみられる計約6千ページの資料が開示される。国民共有の財産である公文書を誠実に守ろうとした公務員が死に追い込まれたのはなぜか。真相に迫る一歩にしなければならない。国会でも改めて検証する必要がある。