スマートフォンなどで手軽に利用できる違法なオンラインカジノを巡り、大阪府警が賭博容疑で調べていたプロ野球オリックスの山岡泰輔投手の捜査結果を大阪地検に書類送付した。海外のサイトに接続し、ポーカーゲーム賭博などで計約300万円を賭けていたという。球団側から申告した点などを踏まえ、起訴を求めない意見を付けたとみられる。
日本野球機構(NPB)によるとオンラインカジノ利用者は8球団に16人いた。野球に限らず、卓球元日本代表の丹羽孝希選手が賭博罪で2月に罰金10万円の略式命令を受けたほか、吉本興業所属の男性タレント6人が今月、警視庁に書類送検された。吉本所属の1人は賭け金総額が約5100万円に上るという。
スポーツ界や芸能界で活躍する著名人らの中で、表に出ているだけでも、これほど違法賭博がまん延している実態は看過できない。
選手やタレントは「合法だと思った」「交流サイト(SNS)で動画を見て興味を持った」「軽い気持ちだった」などと話している。認識不足では済まされず、軽率と言わざるを得ない。改めて自省を促したい。
オンラインカジノでは、スマホやパソコンから現金や暗号資産(仮想通貨)を賭けてスロットなどのゲームができる。事業者にギャンブル合法国のライセンスがあっても、日本国内から利用すれば賭博罪に問われる。だが日本語で「合法的かつ厳格に運営」などとうたう海外のサイトもある。巧妙で悪質な誘導だ。
違法である上に、高額の賭け金を失うケースも珍しくない。今回書類送検されたタレントの中には、数千万円の借金をした人やギャンブル依存症を自覚する人もいた。気軽に始めると、大きな危険があるという認識を社会に浸透させたい。
ただ利用者は拡大している。警視庁の調査によれば、国内のオンラインカジノ経験者は3・5%で、約337万人と推計される。年間の賭け金総額は1兆2千億円を超え、経験者の6割に依存症の自覚があった。深刻な状況である。
政府は3月、新たなギャンブル依存症対策推進基本計画を閣議決定した。決済代行業者などの摘発を進めるほか、カード会社に賭け金などの決済に使われないよう要請する。総務省はカジノのサイトへのアクセス抑止の在り方を話し合う検討会を設ける。日本オリンピック委員会(JOC)などもアスリートの賭博関与を防ぐ研究会を始めた。
違法賭博に関する対応は後手に回っており、政府や関係団体の取り組みは待ったなしだ。施策の効果を検証しながら、実効性のある対策と啓発を強化する必要がある。