少子化のペースが一段と速くなった。地方ほど影響は大きい。地域の活力維持に向け、待ったなしで構造的な問題に取り組まねばならない。

 厚生労働省の人口動態統計(速報値)によると、2024年に生まれた子どもの数は外国人を含め72万988人で、前年より約3万7600人減った。9年連続で過去最少を更新した。国の想定より15年も早く72万人台となった。

 未婚や晩婚の傾向に加え、物価高などで子育てへの経済的な不安が高まったことが背景にあるようだ。新型コロナウイルス禍による婚姻数の落ち込みも響いたとみられる。

 総人口は14年連続で減った。総務省の推計では、24年10月1日時点で日本人は約1億2029万人だった。前年同月より89万8千人減少した。比較可能な1950年以降、最大の下げ幅となった。

 結婚や出産は個人の選択である。しかし、家庭を持ちたいと望みながら将来不安から諦めている人がいるのであれば、雇用や収入を安定化させるなど「障壁」を取り除く政策が必要だ。若い世代が求めるライフスタイルへの理解が欠かせない。

 国がほぼ5年ごとに実施している出生動向基本調査の2021年版によると、「女性のライフコースの理想像」は、独身の男女ともに「仕事と子育ての両立」が初めて最多となった。妻となる相手に「経済力」を求める男性と、夫となる男性に「家事・育児の能力や姿勢」を求める女性はいずれも増えた。

 今や夫婦共働き世帯は専業主婦世帯の約3倍に上る。保育所の整備や育児休業の拡充といった両立支援は以前より手厚くなった。だが、税や社会保障などは「稼ぎ手の夫と専業主婦」を前提にしたものが依然多い。さまざまな年収の「壁」や、専業主婦の無年金対策として始まった「第3号被保険者」制度などの見直しを急ぎたい。

 家事や育児が女性に偏る現状も改善せねばならない。旧来の性別役割分担意識は、女性のみならず男性にとっても生きづらさの要因となり得る。地方から若者が出て行く理由の一つにもなっている。今こそ社会の意識を変える覚悟が問われている。