公正取引委員会は、米グーグルが日本国内のスマートフォン端末メーカー6社との契約で自社の検索アプリを優先して搭載するよう不当に求めたとして、独禁法違反で排除措置命令を出した。

 グーグルを含む巨大IT企業への命令は初めてだ。契約により他社が検索サービスに参入するのを難しくし、公正な競争を阻害した恐れがあると判断した。

 従来も公取委はIT企業に独禁法違反の疑いを指摘してきたが、自主的に改善させる「確約手続き」にとどめていた。今回の命令は違反を認定した上で、指摘された行為を禁止し、役員や従業員に独禁法の順守を周知徹底させる内容だ。独立した第三者による5年間の改善状況の監視と公取委への報告も命じた。

 検索サービスは、生成人工知能(AI)の台頭など技術革新が著しい。公取委には、厳しい姿勢を示すことでグーグルの寡占がAI検索市場に及ぶのを防ぐ狙いがある。公正な競争環境の整備を通して消費者の利益につなげてほしい。

 公取委によると、グーグルは同社の基本ソフト「アンドロイド」を搭載する端末メーカーとの間で、さまざまなアプリを取り込む「グーグルプレイ」の搭載を認める代わりに、自社の検索アプリ「グーグルサーチ」などを初期搭載させる契約を結んでいた。一部の社には、競合他社の検索アプリを搭載しないことを条件に広告収益の分配を決めていた。

 グーグルは「メーカーは取引を強制されておらず、ユーザーにとって最良の選択肢として自らグーグルを選択している」とコメントしている。今回の命令が利用者にどのようなメリットがあるのかは直ちに分かりにくいとの指摘もある。

 しかし留意すべきは、グーグル以外にも多くの企業が検索アプリを開発している点だ。最初からスマホに特定のアプリが入っているのではなく、自由に選べるなら、企業がより多くの利用者を勝ち取ろうと切磋琢磨(せっさたくま)して、より便利なアプリが開発される可能性がある。

 ITの技術やサービスは日進月歩で、追いつくのに精いっぱいという利用者も少なくないだろう。だが、競争が阻害されれば、いずれは利用者にとっても不利益が及びかねない点を認識しておきたい。

 日本では昨年、スマホアプリ市場で巨大IT企業の独占を規制する新法が成立し、今年中に全面施行される。公取委はグーグルやアップルなどを適用対象に指定した。

 巨大IT企業の競争阻害行為には欧州連合(EU)や米国も規制の動きを強める。各国が連携して監視し、厳正に対処するべきだ。