コメの高値が止まらない。3月の消費者物価指数では前年の約2倍に上昇した。政府は3月に備蓄米を2回放出したが、その効果は全く表れていない。そもそも備蓄米が店頭に十分に行き渡っていない点が消費者の不安をあおっている。

 政府は備蓄米を放出すれば終わりではなく、安定した価格のコメが食卓に確実に届くよう、関係業界へ指導を強めるべきだ。

 備蓄米は3月下旬から一部店舗が販売している。農林水産省によると小売店の仕入れ値は通常のコメより3割近く安い。ところが3月末時点の小売店への流通量は初回放出分の0・3%分に過ぎない。

 3月の放出分の94%にあたる19・9万トンは全国農業協同組合連合会(JA全農)が落札した。うち約13・1万トンは売り渡しのめどが立ったが、4月24日時点で出荷したのは4・7万トンにとどまる。流通に目詰まりが起きているのは、配送トラックの手配や精米に時間がかかっているからとされる。

 農水省はこれまで2回の入札では卸売業者間の転売を禁じていたが、今月23日に行われた3回目の入札ではルールを緩和して転売を認めた。政府は7月まで毎月備蓄米を放出する計画だ。全国に幅広く流通するよう、さらに制度設計を改善しなければならない。

 昨年の米不足に際して、農水省は新米が出回れば解消すると説明した。その後も農家や一部業者が投機目的で米を抱え込んだのが値上がりの要因との見方を示した。

 しかし今年3月末の同省調査では生産、卸売り、小売りなどで在庫が増えており、流通のあらゆる段階で米の取り込みが行われ価格を上昇させたことがうかがえる。

 備蓄米の落札業者には1年以内に同量の買い戻しも条件付けたが、今年の新米が不作などで生産量が減れば価格上昇をもたらしかねず、実態を見ながら柔軟な対応を求めたい。

 米不足で急浮上したのが輸入拡大だ。財務相の諮問機関が、無関税で輸入するミニマムアクセス(最低輸入量、MA)米約77万トンのうち主食用枠を現行の最大10万トンから広げるよう提言した。政府も日米関税交渉に際して、MAの制度内で米国向けに6万トンの枠設定を検討している。

 MAの枠自体は変わらないので農家への影響は限定的と踏んでいるようだ。確かに割安の米国産米の輸入が増えれば価格押し下げは期待できるが、国内産米との価格競争で農家の淘汰(とうた)につながる恐れがある。

 重要なのは担い手の確保や耕作放棄地の活用などでコメを増産に導くことだ。国内生産で主食をまかなうのは食の安全保障の根幹である。