労働者の日「メーデー」の5月1日を迎えた。物価高が家計を圧迫し、米トランプ政権の高関税政策で景気の先行き不安が広がっている。暮らしの安心を得るために、働く者が連帯し、権利を主張する重要性を改めて確認したい。
2023年の春闘以降、大企業を中心に高水準の賃上げが続くが、物価上昇には追いついていない。実質賃金は24年5月まで26カ月連続でマイナスだった。その後、ボーナスが支給される夏と冬にプラスに転じたものの、今年1、2月はマイナスとなった。
消費を上向かせ、経済を好循環の軌道に乗せるには、物価の上昇をカバーする賃上げを定着させることが必要だ。労働者の7割が所属する中小企業の取り組みが鍵となる。
25年春闘は、労使交渉の中心が大企業から中小企業に移った。労働組合の中央組織・連合の集計では、4月15日時点の賃上げ率は5・37%。このうち組合員が300人未満の企業は4・97%で、最終的に5%台に届くか注目される。
連合が東京都内で同26日に開いたメーデー中央大会には石破茂首相が出席し、「賃上げの勢いに水が差されることがないよう、米国に関税措置の見直しを強力に訴えていく」と述べた。政府は各国と連携し、不合理な相互関税の撤廃をトランプ政権に粘り強く求めねばならない。物価高を加速させる過度な円安にも注意が要る。
中小企業が持続的な賃上げを実現するには、生産性の改善に加え、人件費や原材料費などのコスト上昇分を適正に価格に反映できる環境整備が不可欠だ。
財務省の統計では企業の内部留保は23年度に600兆円を超え、12年連続で過去最大を更新した。業績が好調な大企業は自社の賃上げに取り組むとともに、コスト上昇に対応した取引先との価格交渉に積極的に応じるべきである。国による「下請けいじめ」の監視強化も欠かせない。
労使はジェンダー平等にも力を入れてほしい。国の24年調査では男女の賃金格差は過去最小となった。とはいえ、フルタイムで働く男性の賃金を100とした場合、女性は75・8にとどまる。家庭との両立支援や女性の管理職登用などの推進は、人材確保にも有効だろう。
労働組合の組織力アップも急がれる。組合に加入する人の割合を示す組織率は、24年に過去最低の16%にまで低下した。ここ数年の賃上げ実現で労組に関心が集まったようだが、加入者増には結びついていない。各労組は課題と向き合い、「必要とされる存在」になるための努力を重ねる必要がある。