2024年元日の能登半島地震の発生から、1年4カ月が経過した。石川県は先月25日に災害対策本部を解散し、昨秋の豪雨災害を含む復旧・復興本部に移行した。地震による大規模火災で大きな被害が出た輪島市の朝市通り周辺で被災建物の公費解体が完了するなど、復興に向けた動きが進みつつある。
一方で、崩れた家屋とがれきが広がり、水道が復旧していない地域も残る。先が見えない不安を抱える被災者は多い。支援のための予算や人材をしっかり確保し、暮らしの再建を後押ししていく必要がある。
深刻なのは、地震の影響で心身に負荷がかかり亡くなった「震災関連死」がまだ増えていることだ。
4月末時点で新潟、富山両県の10人を含め363人となる見通しで、直接死を含めると犠牲者は計591人に上る。石川県によると、関連死の申請は今も後を絶たず、その数はさらに増える可能性がある。
30年前の阪神・淡路大震災以降、何度も指摘される重い課題だ。不安定な生活の長期化が影を落とす。尊い命がこれ以上奪われないよう、最優先で対策を講じねばならない。
人口減少や過疎化が加速する中、地域の身の丈に合ったまちづくりが求められている。
昨年の地震や豪雨災害で家屋の多くが損壊し、公費解体を待つ建物も多い珠洲(すず)市正院町。22年6月に震度6弱、23年5月には震度6強の激しい揺れに見舞われ、そのたびに甚大な被害が出た。家屋の修理に取り組む中で3度目の被災をした住民もおり、心理的、経済的な負担は重い。住宅再建を諦める人が多ければ、町の復興は遠のく。
その正院町で今年2月、珠洲市で初となるまちづくり協議会「正院未来会議」が設立された。昔からある区長会(自治会)と、地域の将来に危機感を持つ若手中心の復興ワーキンググループが一つになって発足した。復興計画を策定した行政と、公営住宅の場所や規模、道路拡幅の必要性などについて協議するほか、ワークショップなどを通じた住民側からの復興案の検討を予定する。
兵庫県の専門家派遣事業の一員として、同協議会の設立や運営支援に奔走してきた神戸まちづくり研究所理事の野崎隆一さんは「住民の合意形成が進まなければ、行政主導になってしまう。住民が個々の利害を超えて、復興したまちのイメージを共有できるかが大事」と指摘する。
変わり果てたふるさとをゼロからつくり直す。その機運が市民の間に高まってきた。他の被災市町でも同様の状況にある。国がそうした思いに柔軟に応え、きめ細かく支援していくことが真の復興につながる。