韓国の次期リーダーを決める6月3日の大統領選まで2週間となった。「非常戒厳」を宣言し、罷免された尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領の後任争いは、非難の応酬となっている。
混乱が続く内政を安定させ、国民の分断を修復することが求められる。選挙戦では、そのための道筋を示してもらいたい。
7人の立候補者のうち、世論調査でトップを走るのは革新系最大野党「共に民主党」の李在明(イジェミョン)前代表(60)である。時に過激な言動で尹政権を攻撃してきた。前回大統領選での公職選挙法違反罪に問われ、量刑次第では被選挙権を失う可能性があったが、公判が大統領選挙後に延期されたため出馬を果たした。
対する保守系与党「国民の力」からは、尹政権で雇用労働相を務めた金文洙(キムムンス)氏(73)が立った。だが、非常戒厳以降の与党内の混乱を反映して公認選びは迷走した。
党大会でいったん金氏の公認を決めたものの、党執行部は前首相の韓悳洙(ハンドクス)氏の方が無党派層を含む幅広い支持が得られるとみて、強引に候補交代を推し進めようとした。これに反発が高まり、党員投票で交代案が否決された。一連の騒動で支持離れも指摘される。
李在明氏と金氏に加え、保守系少数野党「改革新党」を立ち上げた李俊錫(イジュンソク)議員(40)も存在感を高めつつある。過去に国民の力の代表を務め、尹氏と対立して離党した。若者からの人気が高いという。保守層には、票が割れるのを懸念して金氏との候補一本化を求める声もある。
韓国でも日本と同様に物価高や首都圏マンションの高騰が続く。成長が鈍り、所得格差も深刻だ。有権者が経済政策に高い関心を寄せるのは当然だろう。
李在明氏は人工知能(AI)分野への大規模投資、金氏は法人税減税や規制緩和を通じた新産業育成をそれぞれ公約に据えた。李俊錫氏は若者への低利融資を掲げる。ジェンダー平等に関する政策も有権者の判断材料となりそうだ。
世界秩序が揺らぎ、不確実性が高まる中、外交をめぐる論戦にも期待したい。
中国は海洋進出を強める。北朝鮮はロシアと事実上の軍事同盟を結び、核・ミサイル開発を進めている。東アジアの安全保障にかかわる問題と、トランプ米政権の高関税政策による経済への打撃など、日韓両国は課題を共有している。
今年、日韓国交正常化60周年を迎えた。尹前大統領の対日融和路線が引き継がれるかどうかも注目点だ。誰が新しい指導者になろうとも、平和の構築や経済協力で日韓の連携が一層重要になることは間違いない。