企業・団体献金を巡る政治資金規正法の改正が、今国会でも先送りされる公算が大きくなっている。

 自民党は、公明、国民民主両党との合意を反映した規制強化の改正案の国会提出を見送る構えだ。禁止を掲げる立憲民主党や日本維新の会など野党5党派の法案も成立が見込めない。少数与党の国会で、与野党が真剣に合意形成に向けた努力をしたのか甚だ疑問だ。

 企業・団体献金を巡っては昨年の臨時国会で結論を見いだせず、与野党は「今年3月末までに結論を得る」と申し合わせた。今国会には、自民が透明性を高め存続させる法案を、立民などが政治団体を除き原則禁止とする法案を、それぞれ提出した。しかし、3月に始まった国会審議で意見の隔たりは埋まらず、4月以降も議論は停滞している。

 一方、献金の存続を前提に規制強化を掲げる公明、国民民主が自民と協議した。献金した企業・団体の名称の公開基準額を、自民案の「1千万円超」から「5万円超」に引き下げ、政治資金収支報告書をオンライン提出しない政党支部は献金を受け取れなくすることで一致した。

 3党が協力すれば過半数を確保できるが、法案提出に至っていない。自民関係者によると「参院選を前に自公国だけが企業献金禁止に否定的との印象を与えることを国民民主が敬遠した」という。選挙で堂々と訴えられないような案では、そもそも国民の理解は得られまい。

 立民などの法案も労働組合などが政治団体を組織し献金する可能性もあり、「抜け穴」が指摘される。疑念払拭へ説明を尽くす必要がある。

 企業・団体献金は30年前の「平成の政治改革」で、政党交付金を導入する代わりに見直しが決まった。政策がゆがめられたり、政治家と企業との癒着を生んだりする懸念を払拭するためだ。にもかかわらず、抜本改革は実行されずにきた。このまま現状を温存することは政治の怠慢であり、許されるものではない。

 特に自民の責任は重い。「政治とカネ」が焦点となったのは、派閥裏金事件が契機だ。石破茂首相ら歴代首相による新人議員への高額商品券配布も発覚し批判を浴びた。裏金事件の全容解明に後ろ向きなのも相変わらずだ。献金存続を主張するのであれば、現行制度の問題点を検証し、透明性の確保や不正防止につながる厳格な仕組みを築くべきだ。

 トランプ政権の高関税政策や物価高対策などの課題は山積している。「政治とカネ」は、こうした難題に取り組む国会への信頼に直結する問題である。国民の納得できる形で、今国会中に決着させる責任が与野党双方にある。