国の想定よりはるかに速いペースで少子化が進んでいることが改めて示された。

 厚生労働省の人口動態統計によると、2024年に生まれた日本人の子どもの数は68万6061人で、初めて70万人を割った。政府推計より15年早く68万人台になった。女性1人が生涯に産む子どもの推定数を示す合計特殊出生率も1・15と過去最低を更新した。

 政府は1990年代以降、少子化対策を本格化しているが、効果は出ていない。ただ、結婚や子育てを望む若者は決して少なくない。何が若い世代の希望を阻んでいるのか、社会全体の問題としてとらえ、検証を急がねばならない。

 少子化の要因は複合的であり、対策も多様であるべきだ。そもそも若者が減り、未婚化や晩婚化が進む。経済的な負担感などから結婚しても子どもを持たない、もしくは子どもの数を抑える人が増えつつある。

 日本は婚外子が少なく、婚姻数が数年後の出生数にほぼ直結する。結婚するかどうかは個人の選択だが、少子化対策としては家庭を築きたい未婚者への支援が一層重要となる。そのために、まずは若者の結婚に対する意識の変化を理解することから始める必要がある。

 国の2021年出生動向基本調査によると、18~34歳の独身者は男女とも、結婚後に「専業主婦になる」「子育て期に妻がいったん仕事を辞めて再就職」を望む人は約30年前と比べて大幅に減り、「夫婦どちらも仕事を両立」が最も多くなった。

 経済の長期低迷や働く女性の増加を背景に、夫と妻が経済的に支え合うライフコースへの志向が高まっているのは自然な流れと言える。夫となる男性に「家事・育児の能力や姿勢」を求める女性が増える傾向にあるのもうなずける。

 仕事と家庭の両立を妨げる長時間労働の是正は急務である。働く時間だけでなく、テレワークの推進などで働く場所の柔軟化も求められる。性別役割分担意識の変革は必須だ。先進国の中で日本は家事や育児の負担が女性に偏り過ぎている。若い女性の多数が支持する選択的夫婦別姓の導入は論をまたない。国会で何十年も議論している場合ではない。

 石破茂首相は「若者や女性に選ばれる地方」を実現するために質の高い雇用の創出などを目指すとしている。この地で働きたいと若い世代が思う職場を増やす努力は不可欠だ。加えて、地方が本腰を入れるべきは男女格差の是正である。

 女性も男性も、多様な生き方や働き方のできる社会を築くことが鍵となる。先行世代である中高年は今こそ意識を変えていきたい。