今年も暑い夏が巡ってきた。兵庫県福崎町では19日、最高気温35・1度を観測し、県内で今年初となる猛暑日となった。熱中症への警戒を呼びかける「熱中症警戒アラート」も発表された。
昨年6~9月の全国の熱中症による死者は初めて2千人を超えた。今夏も厳しい暑さが予想され、自然災害と同等の警戒が欠かせない。
近年は職場の熱中症対策に注目が集まっている。
厚生労働省によると、昨年の職場での熱中症死傷者は過去最多の1257人に上った。死者は31人で、3年連続30人以上を記録する。
深刻な状況を受け、政府は労働安全衛生規則を改正し、今月1日から事業者に対策を義務付けた。官民が協力し合い、職場の環境改善を進めなければならない。
対策の義務は、暑さ指数28以上または気温31度以上の環境で、連続1時間以上か1日4時間を超える作業をする場合に生じる。発症時の報告体制の整備▽作業からの離脱や身体の冷却、受診などの手順の決定▽従業員への周知-などを怠った場合、6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性がある。
厚労省によると、2020~23年の職場での熱中症による死亡事例103件のうち7割が屋外作業に起因し、発見の遅れが78件、異常時の対応の不備が41件であった。
熱中症は、気温や勤務時間だけでなく作業の強度によってもリスクは急激に高まり、気付いた時には手遅れということも多い。職場ぐるみで現場の暑さを低減させたり、作業時間を短縮・変更したりするなど、実効性を高めることが重要だ。
昨年には、危険な暑さによる重大な健康被害が予想される場合に発表する「熱中症特別警戒アラート」の運用も始まった。
都道府県内の全地点で暑さ指数35以上が予測される場合、午後2時ごろに発表される。まだ適用されたことはないが、いざという時に速やかに対応できるよう備えるべきだ。
特別警戒の発令時は、自治体が「暑熱避難施設(クーリングシェルター)」に指定する公民館や図書館、民間のショッピングセンターを一般開放する。発症リスクの高い高齢者らに分かりやすく周知し、早めの避難につなげてもらいたい。
熱中症の約4割は屋内で発症している。暑さを感じたらためらわずにクーラーをつけ、こまめな水分や塩分の補給が不可欠だ。
夏場は百日ぜきなどの感染症の流行も予想され、熱中症による救急搬送が急増すれば病院の逼迫(ひっぱく)を招く恐れがある。地域医療を守るためにも市民一人一人が予防を心がけたい。