教員が立場を悪用して児童を盗撮し、教員同士で共有していた。信頼を寄せる子どもたちの人権を踏みにじり、不安や恐怖を抱かせる言語道断の卑劣な性犯罪だ。
女子児童の着替えの様子などを撮影して交流サイト(SNS)のグループチャットで画像や動画を共有したとして、名古屋市と横浜市の小学校教員の男2人が性的姿態撮影処罰法違反の疑いで逮捕された。
事件を受け、名古屋市は市内の教職員ら1万人超を対象に不審な行動がなかったかを調べる。保護者の相談窓口開設も予定している。
あぜんとするのは、逮捕された2人を含む約10人の小中学校教員とみられる人物がチャットに参加していたことだ。しかもグループの存在が明らかになったのは、別のわいせつ事件で逮捕された小学校教員の携帯電話の解析が発端だった。
子どもを狙った性加害者が教壇に立ち続けている可能性がある。ほかの参加者を特定するなど事件の全容解明が急がれる。
名古屋市の教員は、授業や行事で児童を撮影する役割を担っていた。学校のデジタルカメラを盗撮に使ったという。チャットには約70点の動画などが投稿され、児童の顔に別人の体を合成した性的な「ディープフェイク」の画像もあった。
勤務していた小学校の保護者説明会では自分の子どもが盗撮されていないか、安心して学校に預けられるのか心配する声が相次いだ。不安は当然だ。まずは児童の気持ちに寄り添い、ケアに努めてもらいたい。不正確な情報が広がらないよう、学年に応じた説明も必要になる。
保護者からの相談には、警察と連携して対応することが求められる。子どもの被害が判明した場合、自治体は保護者が画像削除をSNS運営企業に求める際の手続きなどを積極的に支援してほしい。
大半の教員は真面目に仕事に取り組んでいる。一方で、教育関係者によるわいせつ行為やセクハラは絶えず、2023年度に性暴力や性犯罪などで処分を受けた公立学校の教員は過去最多の320人に上り、うち157人は児童や生徒への行為だった。深刻な事態と言える。
子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を雇用主が確認する「日本版DBS」の制度が、こども性暴力防止法に基づいて26年度から運用される。現在、こども家庭庁の有識者検討会が運用指針を協議している。
性暴力は生涯にわたって被害者の心身に重大な影響を及ぼす。盗撮事件を含め課題を洗い出し、対策の実効性を高めたい。子どもを性の対象とすることを許さない社会にするために大人は行動せねばならない。