参院選で注目を集める争点の一つが、外国人にかかわる政策である。各党が公約に盛り込み、「共生」と「規制」のどちらを重視するかで大きく分かれる。だが総じて目立つのは、規制強化の訴えだ。

 日本で働く外国人やインバウンド(訪日客)が増え続ける状況に、漠然とした不安を抱く有権者もいるだろう。物価高などによる生活への不満が、外国人へのまなざしを鋭くしているケースも考えられる。

 だからこそ、客観的な事実に基づいた冷静な議論が必要だ。

 外国人労働者は今や230万人を超え、社会を支えている。地域社会の一員でもある。外国人への差別や敵意をあおるような主張は、社会を分断し、不安定化させる危険をはらむ。選挙活動といえども断じて容認できない。

 与党は規制を前面に打ち出した。自民は公約に「違法外国人ゼロ」を目指すと記し、外国人による不動産取得や、外国の運転免許を日本に切り替える「外免切り替え」などに、法に基づき厳格かつ毅然(きぜん)と対応するとした。公明は在留管理の厳格化などを主張する。

 野党も国民民主党が「外国人土地取得規制法」や「スパイ防止法」の制定、入国税の課税拡大を盛り込んだ。日本維新の会も、外国人比率の上昇抑制や受け入れの総量規制を含む人口戦略の策定をうたう。

 今回、多くの政党が外国人への規制を競い合う様相を呈しているのは、尼崎市議選や東京都議選で躍進した参政党に対する危機感の表れだろう。「日本人ファースト」を掲げ、過度の外国人受け入れに反対する主張に、保守的な支持者を奪われているとの焦りがあるようだ。

 一方、立憲民主党は在留外国人との共生に向けた「多文化共生社会基本法」の制定を据えた。共産党は、外国人労働者に日本人と同等の労働者としての権利を保障するとしている。どちらも人権保護の観点から入管難民法の改正を訴える。れいわ新選組は低賃金の労働力導入を目的とした「移民政策」に反対する。

 外国人労働者の受け入れは自民党が進めてきた。急激な少子化による労働力不足を補うために、2019年に在留資格「特定技能」を創設し家族の帯同や永住に門戸を開いた。

 事実上の移民政策にかじを切ったにもかかわらず、政府・自民党は「外国人材の活用は移民受け入れではない」として正面からの議論を避けてきた。その責任は重い。

 政府の推計では20年に人口の2・2%だった外国人割合は70年に10%を超える。長期的な視点で移民政策をどう描くのか。国民の理解を得ながら議論を重ねるときである。