7月30日午前、ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とするマグニチュード(M)8・7の地震が発生した。日本でも太平洋側を中心に広い範囲に津波が押し寄せた。

 気象庁は当初、M8・0の推定で津波注意報を発表した。1時間以上たって修正し、北海道から和歌山県にかけての太平洋沿岸は津波警報に切り替えた。津波は北海道から沖縄県にかけ兵庫を含む22都道府県に到達し、岩手県・久慈港で最大の1・3メートルを記録した。

 警報に切り替えたのは、海外の研究機関の解析結果を精査してマグニチュードを上方修正したためというが、地震発生後、しばらくして突然の避難指示が出されたため戸惑った人も多い。避難の遅れにもつながりかねず、時間を要した原因を究明してもらいたい。

 警報は長時間に及び、酷暑の中、多くの人が空調のない体育館や屋外の高台、ビルなどへの避難を余儀なくされた。政府は熱中症への警戒を繰り返し呼びかけたが、避難途中に緊急搬送された人もいた。

 夏の暑さは年々、過酷さを増している。避難先での冷房設備など暑さをしのぐ手段や飲料水の確保が十分だったのかを検証し、今後の対策に生かさねばならない。

 注意すべきは遠隔地で起きた巨大地震による津波の特徴だ。第1波の到達までは時間的余裕があるが、最大波はそれからかなり遅れる。津波自体も非常に遠くにまで伝わる。第1波が小さくても油断はできない。

 1952年のカムチャツカ半島沖地震では、日本でも三陸海岸で最大3メートルほどの津波が到達したが、第1波が来てから数時間以上かかった。米国のハワイでは10メートルを超える津波が記録されたという。今回の地震でも第1波より2波、3波の方が大きい地点もみられた。冷静な行動を心がけつつ、普段から津波の際の避難場所や避難経路の確認など備えを怠らないようにしたい。

 警報発表を受け、東日本を中心に交通機関の運休やイベントの中止が相次いだ。兵庫県内でも海水浴場の閉鎖などの影響が出た。全国的に訪日客が増えており、情報伝達や避難所への誘導が適切に行われたかも検証が必要だ。

 ロシアでは震源に近い地域で5~6メートルの津波に襲われ、建物の流失や負傷者も出ているという。経済制裁とは別に人道上の観点から、状況に応じた支援が急がれる。

 看過できないのは、今回も地震に関する真偽不明の情報が交流サイト(SNS)で流れたことだ。救助活動を妨げ、混乱を助長する懸念がある。自治体や報道機関の情報で必ず確認し安易に拡散してはならない。