酷暑が続く中、スポーツ大会で選手らの命と健康を守るための暑熱対策の必要性が切迫度を増している。例年夏休みに開かれる全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)や全国高校総体(インターハイ)でも対応が進むが、開催地や時期を含め、抜本的な見直しを議論すべき段階に来ているのではないか。

 5日に開幕した夏の甲子園は暑い時間を避け、朝夕に分けて試合をする2部制を拡大した。今大会は初日から6日間で、1日4試合の日も実施する。夕方の2試合目は午後6時45分開始とプロ野球のナイターよりも遅い。試合終了が夜遅くなるなどの課題もあるが、熱中症対策に一定の効果が見込まれる。試合数を重ねていく選手たちの疲労度を考えれば、原則2部制も検討する必要がある。

 7月下旬に広島市などで開かれた高校総体で、陸上競技は一部種目を夕方以降に移したほか、1500メートル以上の中長距離種目は予選をなくして一発勝負のタイムレース方式に変更した。競技場には大型扇風機や、レース後に冷水を体にかけられるエリアを設けるなど対策を強化した。日程や競技方式の変更が選手らに及ぼす影響などを検証し、来年以降の取り組みにつなげることが欠かせない。

 高校総体を巡っては、日本陸上競技連盟が秋への開催時期移行を視野に、全国高校体育連盟と協議している。サッカーは昨年から男子は福島県、女子は北海道と比較的涼しい地域での開催に固定した。しかし開催地は2028年まで決まっており、見直しは一部競技にとどまる。

 高校野球の改革はさらにハードルが高い。日本高校野球連盟は選手の疲労軽減などを狙い、公式戦に7イニング(回)制を導入する案を検討している。炎天下でのプレー時間は短くなるが決定打ではない。時期をずらすことや空調の効いたドーム球場の活用などを考えるべきだ。ただ高校野球の「聖地」とされる甲子園が持つ意味は重く、選手も含めて関係者の声を幅広く聞き、議論を深めてほしい。

 競技を楽しむことができるのは選手らの心身の健康があってこそだ。苛烈さを増す気候を見据え、運営側は環境改善へ一層の努力を続けてもらいたい。