自民党は、参院選大敗を総括する報告書をまとめ、両院議員総会に提出した。物価高対策の立ち遅れや派閥裏金事件に象徴される「政治とカネ」への不信など複数の敗因を挙げ「国民の鬱積(うっせき)した閉塞(へいそく)感に対し、十分な解決策を提示できなかった」と分析した。「解党的出直しに取り組む」と誓ったものの、改革に向けた具体策は乏しく、甘さが目立つ内容と言わざるを得ない。
報告書は石破茂首相(党総裁)の責任には直接触れなかった。首相は参院選敗北の責任を認め陳謝しつつ、進退に関しては「しかるべき時にきちんと決断する」と述べるにとどめ、時期は明言しなかった。日米関税交渉などの「課題に責任を持って対応することも責任だ」とし、続投への意欲も見せる。
だが、政権の屋台骨である森山裕幹事長ら党四役は一斉に辞意を伝えた。首相は「余人をもって代え難い」と森山氏を慰留する構えだが、求心力のさらなる低下は避けられない。参院選で掲げた給付金などの実現には与野党協議が必要だが、自民が混乱を収拾するまで野党が応じる環境が整わないのは明らかだ。
国政選挙で連敗し衆参両院で少数与党の状況を招いた首相は責任を免れない。これ以上の政治空白を避けるためにも、進退を決するべきだ。
総括からは危機意識が感じられない。政治とカネの問題を「不信の底流」と位置付けながら、裏金事件の全容解明や企業・団体献金の見直しに言及せず、自浄能力のなさが改めて浮き彫りになった。信頼回復には程遠い。
総括を受け、党総裁選挙管理委員会は、総裁選前倒しの是非を問う意思確認の手続きに入った。党則は所属国会議員と都道府県連代表の総数の過半数が求めれば総裁選を行うと定める。8日にも是非を判断する。
総裁選前倒しによって「石破降ろし」を画策する国会議員らは多数派工作に躍起だ。議員名などは公表され、首相を支持するか否かを巡って党内の溝が深まりかねない。
一方で、報道各社の世論調査で参院選後に内閣支持率が上昇し、首相の続投を容認する声が広がる。党の顔を代えるだけでは支持を回復できないことを示している。党が抱える問題を直視せず、国民不在の権力闘争に終始する旧態依然の体質への不信が根底にある。全ての議員に自覚を求めたい。
法案や予算案の成立には与野党の協力が不可欠だ。多党化が進む野党とどう連携し、政策をどう進めるのか。山積する経済や外交などの課題に対処するためにも、首相は国政を立て直す道筋を早急に示さねばならない。