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 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの急襲を受け、イスラエルがガザへの攻撃を開始して2年が過ぎた。

 ガザでの死者は6万7千人を超えた。民間人が大半で子どもは2万人超に上る。飢饉(ききん)や医療崩壊など極限化している人道危機を許容することは断じてできない。

 トランプ米大統領は9月下旬にガザの和平計画を示し、これを基に仲介国のエジプトで間接交渉が始まった。合意に向けたハードルは高いが、まずは互いが歩み寄り戦闘を止めるのが先決だ。

 米国の和平計画は20項目からなり、合意後に即時停戦し、ハマスが拘束する人質全員を72時間以内に解放する。イスラエルも拘束中のパレスチナ人を釈放する。イスラエルは先に同意し、ハマスも条件付きで人質全員の解放に同意したとされる。かすかな光明を恒久停戦につなげなければならない。

 難関は戦後処理の在り方だ。和平計画はハマスの武装解除と戦後統治からの排除を求めるが、受け入れるのは難しいとの見方が強い。

 ハマス側が要求するイスラエル軍の全面撤収は、計画に記されていない。イスラエル側は撤収は武装解除後との意向を示し、実現しなければ攻撃を継続する考えだ。ネタニヤフ首相はハマスの壊滅を目指す姿勢を崩していないとみられ、一時停戦が実現するかも見通せない。

 ネタニヤフ氏はトランプ氏の要求に応じ、地上侵攻の停止を指示したとされる。しかし現在も戦闘は続き民間人の犠牲は増えるばかりだ。

 イスラエルに対する国際社会の批判はかつてなく高まっている。国連人権理事会の調査委員会は、イスラエルの攻撃をジェノサイド(民族大量虐殺)と認定した。国際司法裁判所(ICJ)も虐殺を防ぐあらゆる措置を講じるよう求めている。

 交渉で最優先すべきは、ガザ住民と人質の命を救うことだ。イスラエルが停戦を拒むなら、米国は国際社会と連携し、武器提供停止など最大限の圧力をかける必要がある。

 ハマスにもイスラエルの民間人を多数殺害し、ガザ住民や人質の命を2年間、危険にさらし続けた責任がある。戦後統治は国際機関に全面的に委ねてもらいたい。

 中東の和平にはイスラエルとパレスチナ国家の共存が不可欠だが、和平計画には明記されていない。ネタニヤフ政権は、国連加盟国の約8割がパレスチナを国家承認している事実を重く受け止め、2国家解決の道を開くべきだ。

 日本も戦後復興などの支援に尽力し、国家樹立の基盤づくりを後押しすることが求められる。