建設コストの高騰で、公共工事の入札が不調となる事例が各地で頻発している。
豊岡市は文化会館の新築を断念し、既存の市民会館を大規模改修する。加東市は小中一貫校で予算内に収まるよう設計を見直した。公立豊岡病院組合は但馬救命救急センターの新棟を5階建てから3階に縮小した。
公共工事を取り巻く厳しい環境は今後も続きそうで、市民生活にも影響を与えかねず、各自治体は既存の計画を実態に即して早急に見直す必要がある。
建設コストを押し上げている背景には、資材費の高騰と賃金上昇の両面がある。建設物価調査会の分析では、今年11月の建設資材物価は2021年1月に比べ38%上昇している。国土交通省によると、実勢価格を基に、都道府県や職種別に国が決める25年3月からの「公共工事設計労務単価」は13年連続の上昇となっている。日本建設業連合会の試算では、これらの影響で全建設コストの平均は21年比で26~29%上昇しているという。
同連合会によると、建設業は他産業より平均賃金は年77万円ほど低い一方、労働時間は年68時間ほど長く、担い手不足は深刻だ。1997年に685万人いた建設業の就業者は25年後の2022年に約7割の479万人にまで減った。
今月12日に完全施行された改正建設業法では、国が労務費の基準を作成する。建設業の持続可能性は高まるが、受注額の増加は避けられない。各自治体は発想を転換してほしい。
豊岡市の市民会館は築54年で、従来なら多くの自治体が新築による更新を考える水準と言える。しかし約65億円を見込んだ事業費は100億円以上に膨らみ、3度の入札は不調に終わった。ホール棟は改修で築100年まで維持できると判明し、かじを切り直した。大規模改修の事業費は約40億円を見込む。
高度成長期に整備された各地の公共施設が更新の時期を迎える。人口が減り税収も伸び悩む自治体にとって、すべて造り直すのは負担が重すぎる。緊急度や住民にとっての必要性を個々に見極め、長持ちさせる道筋を探るのも一手だろう。持続可能な街づくりを考える好機ととらえ、難局を乗り切りたい。
























