東京電力福島第1原発の事故から3月で15年になる。懸案である廃炉は、最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出しなどが難航し、目標とする2051年までの完了が見通せない。被災地の復興が道半ばの中、政府は昨年のエネルギー基本計画の改定で、事故への反省を踏まえた「可能な限り原発依存度を低減する」との表現を削除した。建て替え要件を緩和するなど、原発の最大限活用へと完全に政策転換した。
衆院選では、この原発回帰の是非が重要な争点の一つとなる。
公約で与党自民党は安定的で安価な電力供給を目指し「原発の再稼働を進める」とする。自民と連立を組む日本維新の会のほか、国民民主党や参政党も原発活用に積極的だ。
今月、東電柏崎刈羽原発(新潟県)が再稼働した直後、制御棒を巡るトラブルが発生し原子炉を停止させる事態となった。同原発ではこれまでもテロ対策などを巡る失態が相次いでいた。浜岡原発(静岡県)の再稼働を目指す中部電力でも耐震設計に関わるデータ不正が発覚した。
これでは国民が原発への不安や電力会社への不信感を払拭できるはずもない。再稼働を推進する政党は、どのようにして安全を確保するのかを示してもらいたい。自民などは従来よりも安全性が高いとされる次世代型の実用化も目指すが、巨額の開発費用や、運転開始までに20年もかかるとされる問題も論点だろう。
立憲民主、公明両党が結成した中道改革連合は「将来的に原発へ依存しない社会を目指す」としつつ、地元合意などを条件に原発再稼働を容認する。「原発ゼロ」を掲げた立民の方針が一転したかに見えるが、野田佳彦共同代表は新増設を認めないと述べており、有権者には分かりにくい。丁寧な説明が求められる。
使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策についても立憲は中止、公明は推進の姿勢だったが中道の公約では触れていない。立場を明確にする必要がある。
共産党は原発ゼロ、れいわ新選組は即時廃止を訴える。原発を使わずに再生可能エネルギーを拡大するとしても、大規模太陽光発電所(メガソーラー)による環境破壊など、再エネにも課題は山積する。人工知能(AI)の普及などに伴い、需要拡大が見込まれる電力を確保する手段について明示してほしい。
現在、発電量全体の中で7割を占める火力発電は二酸化炭素(CO2)の排出量が多い。地球温暖化の抑止には火力の低減は欠かせない。脱炭素を着実に進めながら、国民が安心できる方法でエネルギーの安定供給を図る。衆院選はその道筋を議論する機会にしなければならない。























