高齢者人口がピークとなる2040年代に向け、持続可能な社会保障制度の再構築は急務だ。現役世代が高齢者を支える今の仕組みは限界を迎えつつある。衆院選では与野党ともに負担軽減による手取り増を訴えるが、財源の議論は乏しい。
社会保障は給付と負担を一体で設計する必要がある。超党派の「国民会議」で議論する予定だったが、衆院解散で先送りされた。耳当たりの良い公約だけでなく、痛みを伴う部分も丁寧な説明が不可欠だ。
選挙戦では低・中所得者の手取りを増やす「給付付き税額控除」が焦点となっている。所得税から一定額を差し引き、控除が納付額を上回れば社会保険料を減額する案などだ。与党の自民党と日本維新の会は制度設計を進めるとし、野党の中道改革連合は早期導入を唱える。国民民主党は社会保険料還付制度を掲げる。
だが実現には壁もある。所得のほぼ全額を把握できる会社員に比べ、自営業者らの所得把握は不十分とされ、そのまま控除すれば不公平が生じる恐れがある。低・中所得者の手取りを増やすなら高齢者を含め所得の多い人の負担増は避けられないが具体的な道筋は示されていない。
共産党やれいわ新選組は社会保障への国費の投入増を訴える。こちらも財源は見通せていない。
膨らみ続ける医療費の改革は議論を急ぐ必要がある。与野党の多くが公的医療保険料の減額を主張する。政府・自民党は全国健康保険協会に対し、異例となる保険料率0・1%の引き下げを既に要請している。
一方、医療費の抑制策を巡る議論は十分ではない。近年は医療資機材が高騰し、24年度は病院の7割が赤字となった。政府は26年度の診療報酬改定で医師の技術料や人件費などの本体部分を3・09%引き上げる方針を決めたが、病院の収支改善につながるかは不透明だ。病院関係者は「使途が細かく決められ赤字補塡(ほてん)に使うのは難しい」と話し、統廃合などの検討も避けられない。
与党は抑制策として高額な治療費に上限を設ける高額療養費制度の負担引き上げや、市販薬に似た効能がある「OTC類似薬」の患者負担増を決めた。現役世代への影響も慎重に見極めるべきだ。
与党は医療機関の病床11万床の削減を掲げるが、漫然と削減を進めるだけでは地域によって医師不足がますます進む可能性がある。参政党などが訴える予防医療の強化はどの程度効果があるかが課題となる。
場当たり的な対応を繰り返していては、将来世代の社会保障につけを回しかねない。持続可能な制度にするために、各党は年金や介護を含めた全体像を示す責任がある。























