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 無所属の3人が争った西宮市長選は、現職の石井登志郎氏が3選を果たした。政権与党の自民党と日本維新の会が推す元西宮市議の新人田中正剛氏らを振り切った。

 選挙戦は、厳しい状況が続く市財政の再建策や「待機児童」の解消をはじめとする子育て支援策、公共施設の老朽化対策、医療・福祉の充実などが争点となった。

 石井氏は1期目から政党支援を求めずに「無所属、無党派」を唱えてきた。今回も「市長を決めるのは政党ではなく、一人一人の市民」と訴え、財政構造の改善や18歳以下の医療費無償化、市立病院と兵庫県立病院の統合実現など2期8年の実績を強調した。僅差ではあったが、有権者に一定評価されたのだろう。

 西宮市は「住みたい街ランキング関西版」で9年連続1位を続けるなど、住宅地として高い人気を誇る。しかし阪神・淡路大震災後に回復、急増した市の人口は2016年12月の48万8920人(推計)をピークに減少傾向にあり、48万人割れが目前に迫っているのが現状だ。

 一方で、急激な人口増によるひずみは続く。保育所などに入れない未就学児の数が全国の自治体でワースト2となるなど、長年続く待機児童問題の解消は待ったなしだ。児童らの急増対策で校舎の新増築などを優先したことから、老朽化した学校施設の3割は改修が手つかずで、必要な費用は約553億円に上る。

 石井氏は、保育所の待機児童解消など子育て支援の充実や公共施設の改修費増額などを公約に掲げた。市職員の人件費削減など24年に始まった財政改革は途上であり、市民の理解を得る努力を重ねながら、懸案の解決に取り組まねばならない。

 田中氏は連立政権の枠組みが変わった後、全国の首長選で初めて自民と維新の相乗り推薦を受けた。自民圧勝の衆院選の勢いに乗ろうと、高市早苗首相を前面に出した組織戦を展開した。首相と維新の吉村洋文代表が並ぶチラシを配り、吉村代表が応援演説に来訪するなど政権与党との近さをアピールしたが、無党派層が多い西宮で浸透しきれなかった。

 とりわけ前回市長選で公認候補を擁立して石井氏に敗れた維新は、来春の統一地方選に向け兵庫県内での党勢拡大も狙い、田中氏支援に力を注いだが、今回も及ばなかった。

 財政健全化や行政改革など課題は山積するが、政策論争は深まったとは言い難い。投票率は前回を下回る39・63%と伸び悩んだ。石井氏は約7万1千票を得たが、得票率は有権者数の2割に満たない。「住みたい街」から「暮らし続けたい街」へ、市民との対話を一層深め、謙虚に市政のかじ取りをしてもらいたい。