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 観測史上初となる震度7を2度記録した熊本地震の発生から10年がたった。熊本、大分両県で計4万3千棟の住宅が全半壊し、災害関連死を含め278人が亡くなった。甚大な被害を受けた熊本県益城(ましき)町の区画整理事業などを残し、インフラ復旧はほぼ完了した。しかし生活再建への歩みは人それぞれだ。一人一人の悩みや要望に沿ったきめ細かな支援が引き続き求められる。

 熊本地震では、避難生活に伴う体調悪化などが原因の災害関連死が8割を占め、建物倒壊など直接の被害で亡くなった人の4倍以上に上る。その多くが高齢者で、既往症がある人が大半だった。対策の重要性が叫ばれながら、2024年1月の能登半島地震でも直接死を大きく上回る関連死が認定された。能登の申請件数は今後も増える可能性がある。

 南海トラフ地震や首都直下地震などの発生が懸念される中、過去の災害で指摘された課題をなぜ改善できないのか。被災者が安心して過ごせるよう避難所の環境を整え、関連死を食い止めることは喫緊の課題だ。

 在宅避難や車中泊への目配りも欠かせない。熊本地震では前震、本震と激しい揺れが続き、余震も頻発したことから屋内避難に不安を抱き、車中泊を選択する人が多かった。

 行政が被災者を支えるには、一人一人の状況を正確につかむことが不可欠だ。だが指定避難所に来ない人の所在確認に手間取り、支援物資や情報が行き届かない実態も浮き彫りになった。能登地震でもホテルや旅館に移る2次避難で地元から離れることによる孤立が課題とされた。

 熊本市などは、やむを得ず車中泊を選ぶ被災者向けの駐車場を事前指定したり、スマートフォンアプリを活用し衛星利用測位システム(GPS)で避難情報を把握したりする取り組みを進める。自治体が災害時に十分対応できない場合には、福祉事業者や医療機関、被災地での経験が豊富なNPOなどと情報を共有し、迅速な支援に生かしてほしい。

 能登地震の課題を検証した有識者会議の提言を受け、国も「避難所の支援」から「人の支援」へと方針を転換した。災害対策基本法が改正され、保存食や簡易トイレなど災害用物資の備蓄状況の公表を自治体に義務づけた。避難所運営などは原則として自治体任せだが、人材や財源の不足に悩む地域も少なくない。取り組みに差が出ないよう、国が手厚くバックアップするべきだ。

 南海トラフ地震では災害関連死が最大5万2千人に上り、多数の災害弱者が出ると想定される。被害を減らし命を守るために、熊本地震の教訓を生かし、どう備え、どう行動するか。自分事として考えたい。