イランが事実上封鎖しているホルムズ海峡を、開放を迫る米国が「逆封鎖」する事態となっている。
緊張と対立を一層激化させ、世界経済の混乱を長引かせかねない暴挙である。両国は威圧の応酬をやめ、近く開催の可能性が取り沙汰される2回目の対面協議で戦闘終結のための妥協点を見いだすべきだ。
トランプ大統領による封鎖宣言は唐突だった。パキスタンが仲介したイランとの1回目の協議が物別れに終わり、圧力を強めようと奇策に打って出た。戦闘の長期化で米国内でもガソリン価格が高騰し、岩盤支持層からも非難の声が上がる。トランプ氏が焦りを募らせているのは明らかである。
米国の海峡封鎖措置は日本時間13日深夜に始まった。イランの港湾に出入りする船舶が対象という。米軍は艦船15隻以上を投入したとされ、許可なく通航した船舶が拿捕(だほ)される懸念も指摘される。
エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡は、国連海洋法条約の「国際海峡」に該当する。条約批准の有無にかかわらず、全ての国の船舶が自由に行き来できるのが国際規範となっている。イランにも米国にも、航行の制限や妨害、通航料徴収などの権利はない。
武力で海峡を支配下に置こうとする両国の振る舞いは、国際法違反の疑いが極めて濃厚だ。世界経済を人質に取ったも同然である。断じて容認できない。一刻も早い海峡の全面開放を求める。
中東情勢の混乱による影響は、日本国内の身近な商品にも広がりつつある。原油や、プラスチックの原料となるナフサの供給不安から、家庭向けの冷凍用保存袋、塗料、ユニットバスなどの値上げや販売制限が相次ぐ。建築資材が確保できず、住宅建設が止まるケースも起きた。
赤沢亮正経済産業相は記者会見で原料の供給は足りていると強調し、製品の値上げなどは企業間取引で「目詰まり」が起きているのが要因と説明した。政府は原油の確保に全力を挙げるとともに、流通の目詰まり解消を急いでほしい。国民生活への影響にも目を配る必要がある。
ホルムズ海峡を巡っては、英国、フランス、ドイツなどが自由な航行を確保するための計画を立てているとの報道がある。戦闘終結後に機雷の撤去や船舶の護衛などに当たることが検討されているという。
高市早苗首相は「平和と繁栄をつくる『責任ある日本外交』」を掲げる。米国の顔色をうかがうような対応では国益を損ないかねない。和平を強く働きかけるのはもちろん、戦闘終結を待ってホルムズ海峡の安全確保に貢献することが重要だ。
























