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 兵庫県を拠点とするドクターヘリが、長期間の運航休止に陥る懸念が生じている。ヘリの出動に同乗が必要とされる整備士の不足が深刻化しているためだ。

 救えるはずの命を救えない危機的な状況を避けるために、対策を急がねばならない。

 ドクターヘリは医師や看護師を速やかに救急現場に運び、初期治療を支えている。「空のセーフティーネット」とも言われる。阪神・淡路大震災を機に必要性が議論され、2001年に岡山県で初めて本格導入された。救急車と比較して救命率が約3割向上するとされる。

 国内には現在、都道府県が導入した計57機が配備され、全国をカバーする。兵庫県ではこのうち2機が、公立豊岡病院(豊岡市)と県立加古川医療センター(加古川市)をそれぞれ拠点としている。

 今回の問題は、両機の運航を担う学校法人ヒラタ学園(堺市)が今年5月、整備士不足を理由に7~9月に全面運休する方針を示したことで浮上した。その後、整備士を一部確保できたとしたものの、7月は2機とも2週間程度しか運航できない見通しで、8月以降は未定という。

 兵庫県は中山間地域が多く、ドクターヘリの重要性は高い。県は救急医療に空白を生じさせないよう、隣接県のドクターヘリや消防防災ヘリなどでカバーする方針だが、綱渡りの状況に変わりはない。

 ドクターヘリの断続的な運休は昨年以降、国内各地で相次いでいる。東京都や大阪府では運航委託先の確保が困難となって運休に追い込まれているほか、徳島県では8月以降の運航のめどが立っていない。

 このため厚生労働省は、都道府県の判断で整備士の代わりにもう1人操縦士を乗せる形でもドクターヘリを運航できると通知した。

 しかし、応急的な対策だけでは不十分だ。ヘリの整備士の不足は航空業界全体の課題である。少子高齢化に加え、新型コロナウイルス禍で需要が減少し、将来性が見通しにくくなっているのも要因とされる。ヘリが主流だった農薬散布の分野で、ドローンの比重が増しているのも問題に拍車をかけている。

 国が主導して、整備士の計画的な確保のための処遇改善や、業界への新規参入の障壁を低くするなどの抜本的な対策を講じる必要がある。厚労省はドクターヘリの運航安定化に向けた検討会を7月中に立ち上げる。現場の声を反映してほしい。

 ヘリの操縦士も近い将来不足することが指摘されている。根本的な解決へ向け、国と自治体、救急医療の関係者、航空業界が連携することが不可欠だ。