災害関連死1人を含め28人が亡くなった静岡県熱海市の大規模土石流発生から5年が過ぎた。原因となった危険な盛り土を防ぐ法規制は進んだものの、多くの住民が今も現地に戻れず、生活再建やコミュニティーの再生など復興は道半ばだ。
土石流は2021年7月3日、熱海市伊豆山地区の逢初(あいぞめ)川上流で発生した。市への届け出の3倍を超える高さの盛り土が大雨で崩れ、大量の土砂が家屋を押し流し約2キロ下流の伊豆山港まで達した。住宅などの被害は136棟に及んだ。原則立ち入り禁止となった「警戒区域」は23年9月に解除されたが、避難した132世帯227人のうち、帰還できたのは29世帯60人に過ぎない。
この災害を受け、国は21年度に「盛り土総点検」を実施した。その際に必要な災害防止措置を確認できなかった全国513カ所の盛り土のうち、半数で今も対策が取られていないことが国の調査で分かった。また同点検で「是正が必要」とされた兵庫県内7カ所のうち安全対策工事が完了したのは1件にとどまる。温暖化で極端な豪雨の頻度も増す中、このまま放置が続けば熱海の悲劇が繰り返されかねず、看過できない。
不適切な盛り土を把握しながら行政が連携不足などで対応できなかった熱海の教訓を踏まえ、国は23年に「盛り土規制法」を施行した。土砂の崩落で住宅に被害が及ぶ可能性がある地域を「規制区域」に指定し、用途にかかわらず新たな造成を許可制とした。土地所有者や造成業者らの責任を明確にし、違反した法人には最高3億円の罰金を科す。
盛り土を放置させないために、違反や危険性の高い行為には早期に対処する必要がある。熱海では違法行為を阻止できなかった行政に対する遺族らの不信感が根強く、造成に関わった事業者に加え、市や県の責任を問う民事訴訟が今も続く。
対策が進まないのは、順法意識の欠如や費用負担を嫌って措置命令に応じない業者が多いためとされる。国の総点検後、神戸市は業者に代わって危険土砂を撤去する行政代執行に踏み切ったが、負担した費用の大半を回収できていない。業者の「逃げ得」を許してはならない。
自治体は人命を最優先に考え、業者が応じない場合には行政処分や刑事告発をちゅうちょせず、毅然(きぜん)とした態度で臨んでほしい。国も専門知識を持つ人員の派遣や財政面など必要な後押しに力を入れるべきだ。
豪雨災害が毎年のようにこの時季に起きる。土石流を引き起こす恐れのある危険な盛り土への対応には住民との連携も欠かせない。啓発や非常時の避難方法の確認など足元の安全を再点検し、万一に備えたい。























