なぜ、前途ある16歳の少女が命を落とさなければならなかったのか。遺族側は、自白を強いる兵庫県警の取り調べや18日間に及ぶ身柄拘束のストレスで心身の不調に陥ったことが原因と訴える。事実とすれば、少年の健全育成を掲げる少年法の理念に反し、看過できない。
少女は不起訴処分になったが、捜査側は理由の開示や謝罪の求めに応じていない。母親は県や国に約1億円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こし、特別公務員職権乱用などの疑いで明石署員らに対する告訴状を県警に提出した。取り調べで何があったのか。逮捕や勾留は必要だったのか。県警や神戸地検は事実を明らかにしてもらいたい。
訴状などによると、県内の障害福祉事業所に勤める少女は昨年2月、重度の知的障害がある女性が利用者にかみつこうとするのを顎に手を添えて制止した。目撃した別の利用者が「虐待では」と自治体に相談し、連絡を受けた女性の家族が明石署に申告した。少女は昨年6月に暴行容疑で逮捕された。
一貫して否認する少女に対し、捜査側は10日間の勾留と接見禁止を神戸地裁に請求し「本当はやったんだろう」などと追及したという。その後も10日間の勾留延長を請求し、弁護人の不服申し立てで5日間に短縮されると、再度の延長請求や不服申し立てで対抗した。
遺族側は、逃亡の恐れなど逮捕の必要性がないのに拘束し、自白を迫る「人質司法」の悲惨な帰結だと批判する。捜査手法についても、虐待を疑った目撃者だけに事情を聴き、周囲の関係者には聴取しなかったとして疑問を呈した。この目撃者は後日、「オーバーに言い過ぎた」などと母親に謝罪したという。
少女は警察署の留置場で倒れて救急搬送され、翌日に釈放された。摂食障害でやせ細り、昨年12月の死亡時の体重は逮捕前から半減し約20キロに落ちた。低栄養状態による死は社会に衝撃を与え、県議会や国会で取り上げられた。県警は「訴訟を通じ事実を明らかにする」と答弁したが、警察庁の指導を受けるなど、調査の客観性を担保する必要がある。
近年は少年事件の厳罰化が進んだとはいえ、刑罰より保護を重んじる少年法の理念は変わらない。捜査の基本方針を示す「犯罪捜査規範」も、少年の容疑者についてはなるべく身柄の拘束を避けるよう求め、逮捕する際は「時期や方法について特に慎重な注意をしなければならない」と定めている。
捜査側は厳罰化の流れに迎合し、少年法の理念を軽視していたのではないか。少年事件全般に対する捜査姿勢を省みるべきだ。
























