宇宙航空研究開発機構(JAXA)が進める火星衛星探査計画「MMX」の探査機が、国産ロケット「H3」で打ち上げられた。着陸を目指すのは火星の衛星フォボスで、砂などの試料を採取して持ち帰る。
火星本体を含む「火星圏」からのサンプルリターン(試料持ち帰り)が実現すれば世界初だ。地球帰還は2031年になる。宇宙開発を新たな段階に導く成果が期待される。
計画では、探査機は27年夏に火星近くに到達し、周回する軌道に入ることができれば、29年にフォボスに2度着陸し、砂や石などの試料計10グラム以上の採取を目指す。30年に火星圏を離れ、地球へ戻り試料入りのカプセルを投下する。
直径20キロほどのフォボスの起源には有力な二つの説がある。近くに来た小惑星が火星の重力に捕らえられた「捕獲説」と、火星に別の天体が衝突した際に飛散した破片でできた「衝突説」だ。探査機が持ち帰る試料の解析によって、フォボスの起源の特定につながるほか、太陽系が成り立つメカニズムを解明する手掛かりを得られるかもしれない。火星に生命が存在した痕跡が見つかる可能性もある。
フォボスについては、ロシアが11年に試料採取を目的に探査機を打ち上げたが失敗しており、「太陽系で最も重要な未踏峰」とされる。
最初の難関が、火星の周回軌道に入ることだ。火星は引力が複雑に絡み合い、フォボスへの着陸時も慎重な制御が求められる。重力が地球の2千分の1しかなく、制御を誤れば探査機が損傷する恐れがある。
日本が培ってきた最先端技術やノウハウは強みだ。狙った地点に高精度で降りるために、24年にJAXAの探査機が月面着陸を果たした際に使った画像照合航法を導入する。
カプセルの回収でも、世界で初めて小惑星の微粒子を持ち帰った探査機「はやぶさ」や「はやぶさ2」で実績を上げた方式を活用する。これまでの知見や経験を総動員するとともに、技術に一層磨きをかけたい。
MMXは日本が主導する大型の国際プロジェクトで、フランスとドイツの宇宙機関が開発を担った小型探査車や米航空宇宙局(NASA)のサンプル回収装置なども搭載する。国際社会からの期待も大きい。
火星本体の探査では、米国が月経由の計画を進めており、中国も28年ごろに探査機を打ち上げ、火星の試料を回収する計画を公表している。どの国が先に試料を持ち帰ることができるかも注目される。
近年は宇宙の軍事利用を巡り、米中の覇権争いが激化している。日本はMMXを通じて平和利用を先導する役割を果たす必要がある。























