エッセー・評論

上海発 金鋭のモノクロフォトコラム

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それぞれの軌跡
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それぞれの軌跡

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それぞれの軌跡

 効率よく仕事の成果を上げるには、時間をどう使えばいいのか。究極の要領とは何だろう。サラリーマンのころ、いつもそんなことを考えていた。

 時間の使い方にこだわっていたのには理由があった。大学時代に打ち込んだアメリカンフットボールだが、就職後も会社のチームに入りプレーを続けていた。練習や試合があるのは仕事が休みの週末。若くて体力には自信があったとはいえ、フットボールは選手同士が激しくぶつかり合うコンタクトスポーツだ。試合でタックルを何度も受けると月曜日は体のあちこちが痛くてたまらない。あまりのつらさに営業に出るふりをして、喫茶店で体を休めていたこともあった。

 もちろんフットボールを言い訳に仕事をおろそかにはできない。どう工夫すれば両立を図れるのか。自問を繰り返していた。ヒントはすぐそばにあった。

 週末に会うフットボールのチームメートは、様々な部署から集まる会社の同僚でもある。休憩時間の雑談は自然と仕事の情報交換となる。成果を上げた他部署の事例や、事業の進捗状況、社内情勢などその時はさほど重要だとは思えなかったことが、後々役に立つといったケースも少なくなかった。仕事に対する考えの幅や知識を蓄える機会になっていたように思う。

 経営者となってからは、じっくり考える時間が多くなった。極論すれば、24時間365日、会社のことばかり考えていた。何をしていても頭から離れない。そんな時間を初めて経験した。「経営者に自由はない。あるのは何をどうしたいかを決める自由だけだ」ともいわれる。

 あらゆる観点からできるだけ多くの情報を収集し、決断を下す。そして前へと進んでいく。そのプロセスには常に不安がつきまとう。己の成果だけを考えていたサラリーマン時代に比べ、崖っぷちのような時間が続いた。「決める自由」のための時間が延々と…。

 フリーランスの経営コンサルタントとして活動を始めて2年余りになる。これまでと打って変わって全てが自由。仕事もプライベートもテンポ、ペースとも決めるのは自分だ。もちろん自ら動かなければ仕事を得ることはできない。経営者の時に感じていた決断のための時間とは、また異なった「崖っぷち」状態に常に立たされている。自らの意思を前に進めるため、自分で自分のことを決める時間である。

 一方で家族と過ごしたり、趣味に費やしたりする時間は大幅に増えた。好きな写真家の作品展を見る、写真仲間たちに会う、それだけのために上海から東京へ飛んでいく-そんなぜいたくも味わった。

 フリーになって初めて気づいたことがある。「裏の時間」である。

 究極の要領も崖っぷちの時間も全ては自分本位の時間だ。その陰では仲間や同僚、パートナー、家族が全く異なった時間を過ごしている。当たり前のことだが、自分が体験して初めてその時間の過ごし方や使い方が分かる。家で仕事をしたり、考えたりすることが多くなって肌感覚として理解できた。

 時間は全ての人に平等に与えられる。どう使うかは自分次第だ。人生100年時代といわれる中、これからどう使い、生かしていくのか。時間の使い方こそ人生そのもの、生き方の極意が詰まっている。

2018/6/12

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