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 昨年6月に始まり、1年間にわたる連載を終えたシリーズ「いのちをめぐる物語」(全8部)には、読者から約350通の手紙やメール、ファクスが寄せられました。家族との別れを経験した人、闘病中の人、医療や介護関係者からのお便りもありました。生と死に向き合い、葛藤や後悔、亡き人への愛情…。あふれる思いがつづられていました。取材班はそれらの文面を心に置きながら、1年間、記事を書き進めてきました。シリーズ最後のお便り特集をお届けします。(紺野大樹、中島摩子、田中宏樹)

     ◇     ◇

 母を孤独死させてしまいました。死後10日ぐらいと監察医の先生の診断でした。連絡がなかなかつかず、心配ではあったのですが、私自身の体調が良くないこともあり、そのまま連絡せずにいました。

 ある日、胸騒ぎがして夜に母の所へ行きました。部屋は真っ暗で、警察へ電話で事情を話して来てもらいました。

 その時、先に部屋に入ったおまわりさんが「あーっ」と声を出されたのが、今でも耳に残っています。刑事の方も来て、取られた物はないかとか質問されました。

 幸い、母の遺体はきれいで、眠るように亡くなっていました。臭いもなく、畳なども汚れていなくて、汚物も出ていませんでした。刑事さんや大家さんもびっくりされていました。

 ただ、おなかの所が緑色に少し変色していました。流しには夕食を食べた後の食器があり、それを見た時に「一人で死なせてしまった」と涙が止まりませんでした。今でも心から消えることはありません。

 温泉に連れて行こう、食事にも連れて行ってやろう…。それができないままの別れになってしまい、今でも申し訳ない気持ちでいっぱいです。母は娘の私に迷惑を掛けまいと旅立ってくれたのかなと思いました。

 孤独死が多い現代、何かつらい気持ちになります。こうしてお手紙を書いたおかげで、私の気持ちも少し落ち着きました。(姫路市、女性)

2020/7/5
 

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