ⓒ川崎悟司
ⓒ川崎悟司

 みなさんは、「カンブリア爆発(ばくはつ)」という言葉を聞いたことがありますか? カンブリアとは、約5億4千万年前に始まった時代ですが、爆発だなんてずいぶん物騒(ぶっそう)ですね。どんな事件(じけん)だったのでしょう?

 カンブリア紀(き)の前の時代では、やわらかい生き物たちがのんびり暮(く)らしていた世界だったと考えられています。ところが、カンブリア紀に入ると、海の生き物たちの種類がまるで爆発したかのような勢(いきお)いで一気に増(ふ)え広がりました。だから「爆発」と表現(ひょうげん)するのですね。

 この時代の海には、カルシウムやリンが豊富(ほうふ)にとけていました。カルシウムは貝やエビやカニなど甲殻類(こうかくるい)の殻(から)、リンは私(わたし)たちの骨(ほね)をつくる主な材料です。これらを使って、たくさんの生き物が自分を守るための殻を作り始めたのです。

 カンブリア爆発で現(あらわ)れた有名な生き物をいくつか紹介(しょうかい)しましょう。アノマロカリスは、頭から出た触手(しょくしゅ)でえものを狩(か)る、最大1メートルになる最強のハンターでした。オパビニアは先端(せんたん)に口が付いた長いノズルを持つヘンテコな生き物でした。ハルキゲニアは、背中(せなか)に長いトゲを持ち、長い触手のような足が生えています。化石が発見されたとき、上下と前後を間違(まちが)われた不思議な形の生き物です。

 カンブリア爆発では、今の動物たちにつながるグループがほぼ全部登場し、弱肉強食の世界になりました。食べたり食べられたりすることが、進化の大きな一歩となったのです。

 でも、なぜ突然(とつぜん)そんなサバイバルが始まったのでしょうか? その理由は…次回お伝えします。(科学童話作家)