絵馬もこういう時代になったか-。兵庫県の西宮神社に奉納された絵馬が、SNS上で注目を集めている。片面に黒っぽいシールがべったりと貼られ、中央には「情報保護シール このラベルを貼ることで大切な情報をお守りします」の文字。ほかの絵馬は、願い事が露わになっているため、異様に目立つ。投稿に対して、「絵馬って個人情報ダダ洩れだし」「神様と願い事は共有できるの?」との声が相次ぐ中、「うちではシールは販売していないので、個人で持ち込まれたものだと思います」と神社の担当者。調べると、同様の個人情報保護シールを導入する神社は全国で増え、背景にイマドキ事情が見えてきた。
■神様と人に見てもらうものが本来の姿
「個人情報保護法が施行された2005年ごろ、プライバシーへの関心が高まって、業者からシールを提案されましたね」とは、西宮神社の広報担当。名前や住所など、個人情報が詰まった絵馬。当時はSNSの先駆けで、他人の絵馬を写真に撮ってネット上で拡散される懸念が出始めていたという。
ただ、採用はしなかった。「絵馬は古くから、神様と人に見てもらうのが本来の姿。江戸時代には、絵馬殿という建物に畳1枚ほどの板に絵を書いて飾っていました。今でこそ、何かを達成した報告や感謝、願い事など、個人が神様に見てもらいたいものをしたためるようになりましたが」と説明する。持ち込みのシールについては「人の目を気にして隠したい気持ちも分かります。個人の自由ですので、問題はありません」とする。
■神様も願い事が読めないんじゃないの…?
一方で、SNS対策でシールを取り入れた神社もある。「みちひらきの神様」で知られる三重県の猿田彦神社は2010年頃、絵馬に合わせたオリジナルシールを作成。神社の社紋が入り、「みちびき 願掛け絵馬」と添えた。担当者は「絵馬を書く場所に設置していて、7~8割の方が貼られています。自分の思いとは違った方向で、SNSに流出する可能性もあるので」と話す。また、「縁結び祈願」で有名な京都市の下鴨神社も15年ほど前に取り入れた。恋愛成就の内容もあってか、ほとんど全員の参拝者が利用。赤と白のリボンが印象的な五角形の絵馬に、真っ赤なシールが映える。
でも、シールを貼ると、神様も願い事が読めないんじゃないの…? それぞれの神社に尋ねると、きっぱり。「お参りに行く時、心の中で唱える人もたくさんいますよね。聞こえなくても、見えなくても、神様には届いています」
願い事は、神のみぞシール?
(まいどなニュース・山脇 未菜美)