油絵を描く画家が、小学1年生の甥のために“まさかの場所”に絵を描いた動画が大きな反響を呼んでいます。頼まれたのは、なんとランドセル。6年間使う通学カバンに、耐久性も考慮しながら精巧なタッチで描かれた絵に、「これはもう芸術」「こんなランドセルほしかった」と感嘆の声が相次いでいます。
絵を描いたのは、油彩画家として活動する宇城聖矢さん(@ushirooooooo)。突然、甥から「ランドセルに絵を描いて」とお願いされた宇城さんは、「6年生になっても後悔しない?」と尋ねたといいます。すると甥は、「後悔しない!」と即答。そのまっすぐな思いに応えようと、制作が始まりました。
ただし、ランドセルは革製で、普段使っている油絵具は使えません。そこで今回は「できるだけ長く残るように」と、耐久性に優れた革用の絵の具を使用。下地から丁寧に塗り重ね、仕上がりにも工夫を凝らしました。
絵を描いたのはランドセルのふたの裏側の隅。ふたを開けたときにまるで「やっほー!」と声をかけてくれるように、さりげなく目に入るポーズにしたといいます。「楽しい日もつらい日も、毎日使うランドセルだからこそ、少しでも明るい気持ちになれるように」と、宇城さんは思いを込めて筆を運びました。
完成したランドセルを見た甥は、「え、すげー!」と大喜び。その姿を見て、「想像以上に喜んでくれて、描いた自分がいちばんうれしかった」と宇城さんも笑顔を見せました。学校でも話題になり、新しい友達ができるきっかけにもなったそうです。
描かれたキャラクターは、宇城さんが創作した「熊五郎」。日ごろから宇城さんの動画を見ていた甥が自然と気に入り、「熊五郎を描いてほしい」とリクエストしたといいます。
このキャラクターが生まれたのは、2年前のクリスマスイブのライブ配信中。宇城さんが「人生で最後にサンタからもらったのが“テディベアの帽子”だった」と話したところ、「じゃあ熊を描いてみよう」という視聴者との流れから即興で誕生しました。名前も「熊五郎っぽい」とコメントされたことから、その場で決定したといいます。
以降、ファンとの交流を通じて少しずつ形を成し、「そのままでいいんだよ」というメッセージを持つ存在に育っていきました。服を着ておらず、お菓子が大好きという“ぶれない芯”を持ったキャラクターとして、視聴者の共感を集めています。「熊五郎は、今の世の中で素直に気持ちを表しにくい人たちの、代弁者のような存在です」と宇城さんは語ります。
この制作風景を撮影した動画には、「この角に描くセンスが素敵」「大人でもほしくなる」「長く残るように描いてるのも愛」といったコメントが600件以上寄せられました。「以前から甥とのやりとりを見てくださっている方々からもコメントをいただき、成長を見守ってもらっていると実感できたのが何よりうれしかった」と、宇城さんは感謝を口にします。
甥の存在について改めて尋ねると、「子どもって、常に“今”を生きているんですよね。楽しいことに全力で、知らないことには納得するまで向き合う。その姿を見て、大人になって置き去りにしてきたものを拾い直せた気がします」と話していました。