大学進学を機に遠方で一人暮らしを始めたわが子。親としては「ちゃんとご飯を食べているだろうか」「困っていないだろうか」と気がかりになるものです。埼玉県在住のHさん(50代)も、4月から関西で新生活を始めた大学1年の息子の様子が心配でなりません。しかし届くのは、説明もなく一方的に振込を依頼するLINEばかり。「これがオレオレ詐欺だったら、きっと見抜けない…」と感じてしまうほどの、現代の親子関係を象徴するような出来事が続いています。
■超シンプル…指令型LINEが来る日常
「明後日までに、このリンクに振り込みしておいて」
「今すぐペイペイで〇〇円送って」
「電子契約書送るから電子署名して」
これらは、Hさんのスマホに実際に届いた、大学1年生の息子からのLINEです。地方の国立大学に合格し、この春から一人暮らしを始めた息子。中高は男子校に通い、反抗期以降は口数が少なく、もともと親子の会話は多くなかったといいますが、ここまで報告ナシ・相談ナシ・説明ナシになるとは想定外だったとHさんは語ります。
「何のサークルに入ったの?」「ご飯はちゃんと食べてる?」「部屋の掃除は適度にやってね」とLINEを送っても、既読スルーされる状態が続いています。
少し前に「中学時代のバドミントンのラケット送って」と連絡があったため、「サークルに入ったよ」とか「楽しくやってる」くらいの報告はあると思っていました。でも、届くのは一方的な依頼ばかりのLINE。しかもお願いではなく、命令のような文面です。
■つながりはお金のみ?一方通行の切なさ
大学生活では、サークルの合宿費や教材費、夏休みの短期留学費用など、何かとお金がかかります。しかし、その背景説明が一切なく、ただ「〇日までに〇〇円」とだけ送られてくるとなると、親としては戸惑いを感じてしまいます。
「最初の頃は『何の費用?』『何の合宿?』と聞いていました。でも返ってくるのは『バドミントン』『振込先は旅行社だから大丈夫』という簡単な返事だけです。『大丈夫って何が?』って思いますよね。最近ではもう、詮索しないでほしいという無言の圧を感じてしまい、こちらからも聞けなくなってきました」
Hさんは、まるで自分がお金を振り込むだけの存在になったような虚しさを覚えるようになってきたといいます。
■契約書の電子署名、ペイペイ送金…もはや詐欺の予行練習?
ある日、「大学のサークルで短期で海外に行くから、電子契約書に電子署名して合意してほしい」というメッセージが突然届き、Hさんの不安はピークに達しました。どこの国か、どこの団体か、どんな契約内容かといった説明は一切なく、ただ電子署名を求められただけだったといいます。「これ、本当に息子なの?アカウントを乗っ取られた詐欺だったら?」と恐怖を感じたといいます。
「最近の詐欺は、リアルな口調でお金をだまし取ると聞きます。うちの子はもともと説明がないので、もし『母さん、急いで振り込んで』と言われたら、信じてしまいそうで…」
息子を信じたい気持ちと、防犯意識との間で揺れ動きながら、親としてどのように対応すべきか悩む日々が続いています。
■「そういう年頃」だと割り切るべき?
大学生になったお子さんとの関係性、会話や連絡はどのようなものですか。
▽大学1年息子 50代母・同居
「一人で抱え込んでいないか」「困っていても、言い出せないのではないか」と思って、頻繁に話しかけるのですが「ああ」「うん」しか返事がかえってきません。一緒に暮らしていれば、無言でも気配で気付くことができると思われがちですが、全く何を考えてるかわかりません。
▽大学2年の息子 40代母(千葉県)・同居
何を聞いても全然返事がきません。だけど、「何かあったときのために頼られたときに応えたい」という気持ちから、無言だとしても言われたリクエストにも応じてしまうというのが現実です。
▽大学1年の娘 40代母(福岡県)・別居
一人暮らしを初めて、色々心配なこともあり「もう少し説明をお願いしたい」ということもあり、それを伝えているのですが、過干渉にならないよう慎重に距離感を探っています。見守ることの難しさと、親としての再成長だと思ってます。月に一度は様子を見に娘を訪問し一緒にする時間をつくっています。
▽大学2年の娘 50代母(滋賀県)・別居
昨年から上京し一人暮らしをしています。「大学生活は自分の責任でやっていくもの」と思っているので、こちらから連絡をすることはありません。娘は割と頻繁に連絡をしてくれるし、娘のSNSなども見ています。親からすれば、いくつになっても心配ですし、毎日どんなことがあったのか聞きたいんですが、自分の大学時代を考えると到底言わないだろうなって思います。知りすぎることで、心配が増えるのも辛いですし。
▽大学1年の息子 50代母(千葉県)・同居
全然何もいってくれませんが、そういう年頃だと割り切ってます。子どもだけでなく私自身もまた成長を求められているのかもしれません。しかし、詐欺被害のニュースをみて、息子の声がわからなかったという報道をみると他人事ではないと思ってしまいます。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)