魔王との戦いに挑む七人の英雄(中村ゆきひろさんの提供)
魔王との戦いに挑む七人の英雄(中村ゆきひろさんの提供)

王道ファンタジーといえば、戦士や魔法使いによるパーティーが魔王を倒すという物語が定番ですよね。しかし『千年英雄』(原作:福島航平、漫画:中村ゆきひろ)は魔王に敵わなかった七人の英雄たちが、千年後のリベンジに備える様子を描いた作品です。作画担当の中村さんのX(旧Twitter)に第1話がポストされると、3000を超える「いいね」が寄せられています。

■千年に一度の天才が七人も集結…その結果は“絶望的な戦力差”

魔王討伐から帰還した七人の英雄。しかし、歴史的快挙なのにもかかわらず、七英雄は浮かない顔をしていました。

-ついに魔王が控える部屋の前に戦士「レオノス」、白魔導士「エレノア」、召喚士「ツバキ」、機械工「レンチ」、呪禁道士「エンク」、獣人「ダレイクストン」、魔法使い「ソロモン」という千年に一度の天才と呼ばれる天才たちがやってきました。

そして、扉の向こうには巨大な台座に座る魔王の姿がありました。レオノスが「最期に言い遺すことはあるか?」と戦闘態勢に入ると、魔王の力によって目にもとまらぬ速さでレオノスの両腕と両耳が切断されます。途端にパーティーは一斉に攻撃を仕かけ、エレノアはレオノスの回復に努めます。

しかし、魔王が片手だけで張った強力なバリアで攻撃を無効にされ、次の瞬間に魔王の攻撃で全員が吹き飛ばされてしまう始末。防戦一方になる中、レオノスは回復魔法で意識を取り戻して、捨て身で魔王に向かって走り出します。

他の仲間はレオノスを援護するために、ぞれぞれの必殺技を放出します。そのおかげで一瞬の隙が生まれ、レオノスは全力の蹴りを魔王の頭部に振り下ろそうとしたものの、至って冷静な魔王は一振りの攻撃で、全パーティーに大ダメージを与えました。

さらに身動きが取れないように強力な魔法を繰り出し、そこでようやくみんなは魔王とパーティーの間には絶望的な戦力差があることを自覚します。そして、魔王はトドメの一撃を放つと、ダレイクストンがパーティーの前に立ちはだかり、「3つ数えるうちに決断しろ」「ワレが生きて守ってやれるのはそれが限界だ…!!」と言います。そして、ソロモンは時空結界「クロノスジェイル」を発動するのでした。

というのも魔王討伐に向けてパーティーは、予め全人類の10年分の寿命を魔力に変えていて、もし全滅の危機に瀕した場合、その魔力を使って究極魔法のクロノスジェイルを発動するという保険をかけていました。クロノスジェイルとは、魔王をはじめ全ての魔族を別次元の異空間に千年もの間、転移させる封印魔法のこと。苦肉の策で発動したクロノスジェイルによって魔族たちは異空間に転移されたのでした-。

そして、魔王討伐から帰還したパーティーは集まった民衆に「千年間の封印」に成功したことを報告します。しかし、大きな問題も残っていました。調査の結果、魔族は時間が経つにつれて強くなる特徴があるようで、千年後の封印が解ける頃には“1000倍の強さになっている”とのこと。千年後に封印が解かれたら、今では比べものにならないほどの強力な魔族たちを倒さなくてはいけないのです。

それでも「耐えがたい苦痛に身を置きながら毎日強くなるんだ」「そんな一日を千年 積み重ねよう」「そうすれば 千年後 絶対に勝てる」と宣言するレオノス。しかし、あまりにも絶望的な状況に困惑する民衆たち…さらにレオノスは「強くなろう」「次は勝つ!!」と自身の胸を強く叩いて民衆を鼓舞します。そして、彼の演説に勇気づけられた民衆たちは、手を上げてレオノスの言葉に応えるのでした。

-七英雄たちは魔族を封印したこの年を「戦暦元年」と制定。人類はこれからの千年を終末ではなく、戦いの期間とすることを選択するのでした。

読者からは「バトル描写の迫力がすごかった」「千年後、どんな結末になるのか、早くも気になって仕方ない」などのコメントがあります。そこで作画担当の中村さんに、同作を描くことになった経緯について話を聞きました。

■原作者・福島航平さんの誘いによって『千年英雄』の作画担当に

-同作を描くことになった経緯を教えてください。

原作の福島航平さんはこういうオールスター物のような話が好きで、以前からシナリオを書きためていたそうです。それをたまたま私が読ませてもらいました。とても面白かったので、感想を伝えると「よかったら漫画にしてくれませんか」とお誘いをいただき、現在に至ります。

これまで原稿料は福島さんが全て自腹で払ってくれていたのですが、配信代行をお願いしていたナンバーナインさんが今後は原稿料を出してくれることになりました。その辺の経緯は漫画にもしていますので、よかったらご覧になってください。

-第1話の中で、特にお気に入りの場面は? 理由と一緒にお聞かせください。

私が好きなのは、戦士レオノスの最後の演説シーンです。福島さんのシナリオを読んでグッと来たのですが、人類が絶望から立ち上がり覚悟と決意が示される、とてもいいシーンだと思います。

-作中には7人の英雄が登場しますが、それぞれのキャラはどのような経緯で誕生したのですか?

福島さんは「スマッシュブラザーズ」「アベンジャーズ」「スーパーロボット大戦」など、様々な作品がクロスオーバーするオールスターものが大好きだったそうです。そこで「自分が考えたキャラだけで成立するオールスターが作れたら爽快だろうな」と考え、こういったキャラクターたちができあがったそうです。

-読者にメッセージをお願いいたします。

『千年英雄』は1000話まで続けたいと思っていますので、応援していただけたらうれしいです!9月1日には50ページ以上の描きおろしを含んだ単行本が配信開始となりますので、どうぞよろしくお願いします!

(海川 まこと/漫画収集家)