親友を助けるために送ったお金で贈与税が発生? ※画像はイメージです(polkadot/stock.adobe.com)
親友を助けるために送ったお金で贈与税が発生? ※画像はイメージです(polkadot/stock.adobe.com)

ある日Aさんは、幼い頃からの親友であるBさんに「病気で仕事を失い、生活に困窮している」と知らされます。今までどんなに辛いことがあっても、決して弱音を吐かなかったBさんが、素直に助けを求めるという状況に驚いたAさん。心の底から「何とか力になりたい」と思い、自身の貯蓄から200万円を工面してBさんの銀行口座へ振り込みました。

送金後、Bさんから電話口で涙ながらに感謝の言葉を伝えられ、Aさんは友人を助けられたことに胸をなでおろしていました。これで少しは、Bさんも落ち着いて治療に専念できるだろうと安堵したのです。

しかし、その安心感は数日後に脆くも崩れ去ります。何気なく読んでいたインターネットの記事に、Aさんの視線が釘付けになりました。そこには「個人間で年間110万円を超えるお金のやり取りには贈与税がかかる」という一文があったのです。

200万円という金額は、明らかに基礎控除額の110万円を超えています。まさかBさんに多額の税金負担をかけてしまったのではないかと考えれば考えるほど、Aさんの心は不安で一杯になりました。

このように、困っている親友を助けるためにお金を送金した場合、贈与とみなされるのでしょうか。正木税理士事務所の正木由紀さんに話を聞きました。

■人助けでも贈与とみなされる

ー友人への金銭的な支援は、贈与とみなされますか

原則として贈与とみなされます。親族であるかどうかにかかわらず、個人から年間で合計110万円を超える財産を受け取った場合、受け取った側(この場合はご友人のBさん)に贈与税が課されます。AさんがBさんに振り込んだ200万円は、この基礎控除額110万円を超えているため、贈与税の課税対象となる可能性が高いです。

ー「扶養義務者間の生活費・教育費は非課税」と聞きますが、友人は対象外ですか

扶養義務者間で、生活や教育のために必要と認められる範囲で、その都度渡される金銭については贈与とみなされないというルールがあります。

しかし、法律上の扶養義務者とは、一般的に配偶者、親子、祖父母と孫、兄弟姉妹などを指します。残念ながら、友人関係はこれに含まれないため、この非課税のルールを適用することはできません。

ー贈与税の負担をかけずに友人を支援するための、より良い方法はありますか

一つは「貸付」という形をとることです。これは「贈与」ではなく「貸したお金」ですので、贈与税はかかりません。ただし、単に口約束で「貸した」というだけでは税務署に贈与とみなされる可能性があります。そのため、金銭消費貸借契約書を作成し、返済期間や利率などを明確に定めておくことが重要です。

もう一つは、年間110万円の基礎控除の範囲内で複数年に分けて支援する方法です。今年110万円、来年90万円というように分ければ、Bさんに贈与税の負担はかかりません。

ーすでに基礎控除を超える金額を渡してしまった場合はどうなりますか

「贈与」から「貸付」に切り替える方法が有効だと考えます。今からでも金銭消費貸借契約書を作成し、契約書には貸付日を実際に振り込んだ日に遡って記載し、返済計画も具体的に定めます。

その計画に沿って、少額でも実際に返済が行われているという事実を作れば、税務署に対して貸付であることの証明となるでしょう。

まずはBさんとよく話し合い、お二人の状況にとって最善の方法を選択しましょう。解決が難しい場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

◆正木由紀(まさき・ゆき)/税理士
10年以上の税理士事務所勤務を経て令和5年1月に独立。これまで数多くの法人・個人の税務を担当。現在は、社労士や司法書士ともチームを組み、「クライアントの生活をより充実したものに」をモットーに活動している。私生活では2児の母として子育てに奮闘中。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)