父が所有するラジオ近影(ゆうさん提供)
父が所有するラジオ近影(ゆうさん提供)

取り憑かれたかのように趣味や遊びに没頭した経験は誰しもあるのではないでしょうか。自分では満足していても、その趣味は周りに理解されないこともあるのかもしれません。そんなエピソードを描いた作品『父が取り憑かれているもの』(作:ゆうさん)がInstagramで注目を集めています。

ゆうさんの父親は「THE田舎のおじちゃん」という風貌で、よく食べ、よく働き、人を気遣える優しく真面目な人です。しかしゆうさん曰く「なんで?」と思ってしまう点が多いそうで、その1つがラジオでした。

ゆうさんは実家に行くたびに増えている父親のラジオがとても気になっています。というのも父親は、とにかくラジオを肌身離さず持ち歩き、常に放送を聞いているのです。仕事中はもちろん、休憩中、就寝時までラジオと共に生きています。超倹約家でほとんどお金を使わない父親が唯一自分で買ってくるものがラジオなので、よほど好きなのだろうとゆうさんは考えていました。

しかしある時、ゆうさんが父親に「お父さんってよっぽどラジオ好きなんやね…」と聞いてみると、「好き…そりゃ嫌いじゃないけど。何言ってるかは全く覚えていない。というか聞いてない」という衝撃の答えが返ってきます。この答えを聞いたゆうさんは「あんなに四六時中聞いてるのに!?」と驚きます。

それに対し父親は「誰かが何か話してるなぁ、なんか音楽が鳴ってるなぁって思いながら作業してる。でも内容は気にしたことない。音楽も分からないし」とまたもや驚きの発言をします。つまり父親からしたらラジオは「よく分からん音が鳴る機械」でしかないのです。

その一方で、父親はラジオを持ち運び用、畑仕事用、高所作業用、車庫用、風呂場用、寝床用、休憩用、秘密基地用など、状況毎に複数用意しています。好きではないが多くのラジオを所有している父親にゆうさんは若干の恐怖を感じるのでした。

読者からは「人の気配がすると落ち着くのかも」「つけっぱなしのテレビみたいな感じ?」「なんか分かる気がする」など、共感の声が多くあがっています。そこで同作について、作者のゆうさんに話を聞きました。

■家族の私たちからするとかなり「変わってる」人

ーお父さんの気になるエピソードは他にもありますか。

優しくて働き者でよくできた人なのですが、家族の私たちからするとかなり「変わってる」人なので、日常生活でもやることなすこと突っ込みたくなることがたくさんあります。

父はコーヒーが大好きで四六時中飲んでいるんですが、ホット限定なんです。朝晩のくつろぎタイムでなら理解できるのですが、酷暑と言われるこの夏も、外で作業している最中にもホットコーヒーを飲んでいます。暑いからと冷たい麦茶を差し出そうとしても、熱いコーヒーがいい、と言います。せめて冷たいコーヒーにしたらと言っても、絶対に熱いコーヒーなんです。なぜここまでホットコーヒーに固執しているのか、恐怖すら感じています。

ーたくさんのラジオを購入して使い分けている理由はその後、明らかになったのでしょうか?

父に聞いても「なんとなく」という答えしか返ってきませんでした(笑)。けれど思い返せば、若い頃の父はお酒の瓶を集めていたり、タバコのパッケージを集めていたりしていたので、そういった収集が好きなんだと思います。飾ってコレクションしているわけでもないのに無限に増えていく理由はさっぱりわからないのですが…笑

ーゆうさん自身はいかがですか。

私が取り憑かれているのは「ガチャガチャ」ですね。旅先でも普段のショッピングでも、必ずガチャガチャコーナーはじっくり見て回ります。好きなキャラクターもの、大好きな猫モチーフのもの、よく知っている商品がミニチュアになったもの…毎回たくさん回して、ガチャガチャコレクションスペースに飾るのが至福の瞬間です。

ーコメント欄でゆうさんが気になったコメントがあれば教えてください。

「お父様にとって、ラジオは作業BGMみたいなものなんでしょうね」というコメントをいただいてなるほどなぁ~!と妙に納得しました。私も作業中は常に、作業BGMとして音楽を流しているので、父にとってもラジオは「集中して聞いているわけではないけど、かけていると作業が捗るもの」なんだろうな、と今では父とラジオを見ながら考えています。

(海川 まこと/漫画収集家)