セクシービデオ業界に興味津々なみなさんなら、「NG」という言葉の意味は分かるでしょう。この世界における「NG」とは基本的に、女優さんができない・やりたくない仕事を指します。
NGは少ない方がオファーをもらいやすく、活動の幅も広がります。しかし「いくらお金が高くてもダメなものはダメだ!」という人も多いですから、メーカーやマネージャーがムリヤリこじ開けることはできません。あくまで同意のもとで解禁ということなのです。
ただ、なんでもかんでも解禁すれば良いってものでもないのが難しいところ。×(バツ)が山ほどあっても困る一方で“何でもござれのNGなし”だと女優のイメージ戦略の観点などで話が変わってくるため、事務所やメーカーは慎重に今後の計画を立てていきます。
■NG解禁のタイミング
ビデオのパッケージに「〇〇解禁!」という謳い文句があると、ユーザーの注目度が上がります。ずっと似たような作品にばかり出演しているとマンネリ化は避けられないため、NG解禁により売り上げや空気感に変化が起きれば、女優生命も延びるということ。数字が下がってきたり、デビューから半年~○年経ったタイミングで勝負に出ると、うまくいきやすいようです。
また、ずっと売れっ子だと「NG解禁をせずに引退まで持っていけるケースもある」と某メーカーのAさんは語ります。(以下「」内、Aさん談)
「もう最近は少ないけど、数字さえ取れれば無理にNGをこじ開ける必要はありません。業界歴が長くなるほど似たり寄ったりの作品が増えるし、ネタ切れを起こすんだけど。それでも売れていれば問題はない。ただハード系の解禁は少しギャラを上乗せできるので、引退間際の急な“解禁ラッシュ”は最後の荒稼ぎってことも多いね(笑)」
ちなみに、本人たっての意思で解禁を望む話も少なくありません。セクシー女優として活動を続けるうちに考えが変わると、自ら事務所やメーカーにお願いをするようにしましょう。Aさん曰く、説得する必要がなければ話がスムーズに進むため、「このパターンが最も有難い」そうです。
「本人がNG出してるのに“やってみない?”って誘うの、労力かかりますから。まぁこっちはそんなの慣れてるんだけど、頑なに拒否するコもいるので、志願してくれるとラクですよね。嫌々OKされるより、自らやります!って方が良い作品が撮れるだろうし」
NG解禁のタイミングは、本当に人それぞれと言えましょう。しかし、矢継ぎ早に“解禁祭り”をするのは極めて危険。肝心なのは1つ目の解禁以降なのだと、Aさんは話を続けました。
■NG解禁の難しさと、その後
「1つOKすると、その次の解禁に対するハードルが下がったように思えるでしょ。そのままどんどんいけちゃうコもいるけど、何でもかんでも(NGを)取り払えばいいってもんじゃないんです」
NG解禁後、ユーザーはまた次の解禁を期待します。しかし、ここで次から次へと目新しいものを提供し続けると失速は免れません。与える数が多いほどユーザーは貪欲になり、女優自身の負担も増えるため、計画性が何よりも重要。考えなしに進めば数字が取れなくなり、首を絞める恐れがあるからです。
また、初解禁はなるべくハードルが低いものを選びますが、どんどん鍵を開ければ残りは……といったところ。守るべき部分を守らねばならず、でも売り上げは落とさず、の双方を意識するので、途中で嫌気が指して引退を選ぶ人さえいます。
「ハード系の解禁に多いケースなんですが、仮に数字が下がってハードに挑戦→売れたとしましょう。もしそうなったら専属でも企画でも、そっち系のオファーが増えやすくなります。特に企画の場合だと“激しいのはNG”なんて子も多いので、OKできる女優に優先して仕事を回しますから。本人が心から納得できていないと、行き詰まってやめてしまう可能性も大いにあり得ますね。最初は良いけど、段々しんどくなるみたいな感じで」
筆者もロリ系で売っていた女優さんがNG解禁ルートに進み、仕事がつらくなってやめた話を聞いたことがあります。オファーはどんどん来たようですが彼女は「心が持たない」、「本当にやりたかった路線と違う」とボヤいていたとか。業界的な目線で解禁が成功しても、女優自身がしんどいと感じればそれは真の成功ではないのでしょうね。
「解禁したものを再度閉じることはできますけど、コア寄りの内容でない限りあまり印象は良くないですよね。だからこそ慎重に進めなければならず、意思確認もしっかり行わないと元も子もない状況にも陥りやすいのです。ユーザーからすると解禁は嬉しいけど、こっちからすると時限爆弾にもなり得るんですよ(笑)」
当たり前ですが制作者とお客さんの間には必ず“ズレ”が生じますので、NG解禁はその典型例と言えましょう。みなさんが考えるよりも女優自身の希望を尊重しながら数字を取り、売り出しの方向性を定めるのはなかなか難しい問題なのですから。
NGといっても内容は様々ですが「コミュ障だから、他の女の子に会いたくない」という理由で共演作品を丸ごと拒否する人もいます。何もハードプレイだけではなく、NGを出すものに関しては幅がとても広いです。
あなたの推し女優が解禁作をリリースしたら、その裏には相当な努力や考えがあるのかもしれません。ぜひその点を考慮して、彼女たちを応援してあげてください。
◆たかなし亜妖(たかなし・あや)
元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。