ついつい氷を食べ過ぎてしまう…「氷食症」を知ってますか?
ついつい氷を食べ過ぎてしまう…「氷食症」を知ってますか?

気付いたら氷を食べてしまう「氷食症」が注目されている。

気温の高さや喉が渇いているからなどには関係なく、無性に氷が食べたくなり、かみ砕くと落ち着くとされる。もし思い当たる場合、どのように対処すればいいのだろうか?

病気を未然に防ぎ、健康寿命を延ばすための予防医学と栄養学が専門で、潜在性鉄欠乏症の講演も行う、新百合ヶ丘総合病院(神奈川県)予防医学センター消化器内科部門部長の袴田拓医師に話を聞いた。

--そもそも氷食症とは? 

袴田:貧血に由来するものとされているのですが、正確にはまだ解明されていません。あくまでも症状で、まだ病気にはなっていない状態なので研究する専門家がおらず、不明の部分も多いんです。定義も曖昧なのですが、1日に製氷皿一皿分、2カ月以上食べ続けてしまう人は、氷食症と呼んでいいでしょう。

土やチョーク、髪の毛を食べてしまう異食症の一種との説もあり、冷たいものというよりも硬いものが欲しくなっているのではという考えもあります。鉄は酸素の運搬やホルモンの働きなどを維持する大事な栄養素。不足すると集中力が無くなりイライラするので、無意識のうちに何かかみ、気分を落ち着かせている可能性もあります。

--どんな人に症状が出るのですか。

袴田:鉄欠乏性貧血が主な原因と言われているので、生理のある10代から40代までの女性に多いです。また、子宮内膜症、アトピー、脂肪肝など、体のどこかに慢性炎症がある場合も、鉄分が吸収されづらく、貧血になりやすいと言われています。

-- 貧血が回復すれは氷食症もおさまるんですか?

袴田:そのケースがほとんどで、病院で処方された鉄剤を根気よく服用し、貧血が改善されると、「もう氷食べたくならない」と言われる人が大半。残念ながら日本は「鉄欠大国」。アメリカでは小麦や砂糖、シリアルなどの主要食材に鉄を添加、中国やベトナムでも鉄を配合した醤油を積極的に使用するなど対策が取られていますが、日本ではまだ特別な対策は取られていません。鉄分不足は受精卵が着床しづらくなる不妊症や、免疫力そのものが低下して本当の病気に繋がる確率も多くなります。心当たりのある方は、内科の受診をお勧めします。

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SNSでは「コンビニで氷買って食べてる」「暑いからだと思ってた」などの意見が見られ、悩む人は多そうだ。鉄欠大国の日本では、まだ個人での栄養管理が重要。現在は鉄分入りクッキーや鉄分ソーセージなど、栄養に配慮した食材も手軽に購入できるので活用したい。

袴田拓(はかまだ・たく)さんプロフィール
医師、新百合ヶ丘総合病院予防医学センター消化器内科部門部長、同病院消化器内科科長。日本肝臓学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医・指導医。1992年に筑波大学医学専門学群卒業後、つくば双愛病院消化器内科、霞ヶ浦成人病研究事業団健診センター勤務などを経て現職。

(まいどなニュース特約・米田 ゆきほ)