お腹がつながった状態で生まれた結合双生児の姉妹、長嶺姉妹「@sakahika」。2001年3月7日に生後2カ月で分離手術を受けた彼女たちが、16年後の2017年3月7日に亡き父から受け取った「命のバトン」を胸に、“モデルになる”という夢を追う姿がYouTubeに投稿され、「希望をもらった」と大きな注目を集めています。そんな姉妹に、生い立ちやSNSでの発信を始めた経緯など、お話を聞きました。
姉妹が生い立ちの公開を決めたのは、あるテレビ番組の取材がきっかけだったといいます。
「もともと人前に出るのが得意ではなく、目立たないように過ごしてきました。それでも取材のお声がけをいただき、わざわざ私たちを探し出して話を聞きたいと言っていただけたので、お受けすることにしたんです」
この経験を通し、「私達の生い立ちを取り上げていただくことで、その放送を見た方達になにか希望を与えられたり、『こんな人達がいるんだな~』と思ってもらえたりしたら良いな」と感じたそうで、自らもYouTubeで発信することを決意したのだとか。メディア取材の際に「低身長モデルが夢」だと語ったことも、その決断を後押ししたのだそう。
2001年1月10日に生まれた姉妹は、早く生まれたために体が小さかったといいます。そこから約3カ月が経つと一人ひとりの体重が3kgに達し、「手術に耐えられる体力がついた」と判断され、分離手術を受ける運びになったのだそう。当時、姉妹の父親は「手術中、どちらかの体力がなかったり、臓器に問題が起きたりして、“どちらか一人”を生かすための選択を迫られるかもしれません。覚悟してください」と医師から告げられていたと明かしています。
実際に手術をしてみると、姉妹は二人で肝臓を共有していることが判明したそう。共有している肝臓の中に一人分の胆管しかなければ、医師に告げられたような選択をしなければなりませんでしたが、無事に二人分の胆管があったたためスムーズに手術は進んだといいます。こうして姉妹の分離手術は5~6時間に及んだものの、見事成功したのです。
「私たちは、もしかしたらどちらか一方は亡くなっていたかもしれない。--そう思うと、命と死は表裏一体、普通に生きていくって当たり前のことじゃない、本当に奇跡なんだと思います」
そんな姉妹にとって、「3月7日」は重要な意味を持つ日。しかしそれは、単に分離手術を行った日だから…というわけではありません。実は姉妹が16歳になった年、同じ「3月7日」に父親が亡くなったのです。この日付の巡り合わせに、姉妹は「“自分のことを忘れないでほしい”という気持ちで、分離手術と同じ日に天国にいったのかな…。父からの命のバトンを渡されたような気がしています」と語ります。
「父は、過去に脳出血を患い後遺症がありましたが、体が弱かった私達をキャンプや虫取りなどへ積極的に連れ出してくれました。父がいなければ出来なかった経験をたくさんさせてもらったおかげで、体が強くなったと思います」
父の亡き後も、姉妹を支えたのが母親の存在でした。二人は勉強についていけないこともあったそうですが、「焦らず、自分のペースでいい!」という母親の言葉に助けられたといいます。
「母は勉強を無理強いすることなく、『いつかできるようになるでしょう~』と温かく見守ってくれました。そのおかげで、空回りすることなく、短大まで卒業することができました」
また姉妹はお互いについて、「ライバルでもあり、親友でもあり、姉妹を超えた存在」「まさに一心同体」と語ります。
動画の最後では、「今日もこの生かされている命を精一杯、全うしようと思ってます」と力強く語っている姉妹。身長は143cm・145cmと小柄ですが、幼い頃からの夢であるモデルを目指し、現在はウォーキングやポージングの練習に励んでいます。
「どんな生まれ方をして、どんな特徴を持っていたとしても、それは素敵な個性。それを活かして、『夢や目標を追える!叶えていける!』ということを伝えていきたいです」
※記事を一部修正しました(10月22日午前7時28分)